Hunter and Vampire ~禁足地に一人残り五年間ダンジョン内でモンスターを狩りまくったハンターと異世界からやって来た吸血姫の狩猟冒険譚~

浅葱乃空

第0話  プロローグ

「ふう~。結構登ったな。」

「そうですね。」


二人の男女が、道なき落葉広葉樹が生い茂る山の中、藪をかき分けて上へと進む。


一人は黒髪に黒目の青年で背丈は170半ば、濃緑のマントの下には革鎧を身につけ足には同じく革ブーツ、肩にはウッドストックの小銃レバーアクションライフルをかけ、腰には片手剣やポーチを装備している。


もう一人は白銀の髪に赤眼を持つスレンダーな美女で、こちらは黒のマントに同じく革鎧とブーツ、そして自身の体よりも大きいハルバードを背に担いでいた。

青年の顔が整っていないわけではないのだが、女の容姿と比べると地味さを否めない。



”ずっと同じ風景が続くな”

”同じ絵でつまらん。シエスたんの戦闘シーンはよ”

”いや、こういうチャンネルだから・・・”


二人の後ろを少し離れて追跡する配信用ドローンを背に、二人はどんどん巨大なシダ類が生い茂った薄暗く急勾配な斜面を登って行く。


「コージさん、先が明るいですよ。」

「おう。」


しばらくと登り進むと森が途切れ、ごつごつした岩肌が露わになる。


「あれが山頂だな。」

「ですね。」


突き出した巨大な岩を見て青年が言う。

2人は岩壁をよじ登る。


”現在ダンジョンを出て7時間が経過”

”本当にただ山を歩くだけの配信だったな”

”なのに視聴者数が5万人いるという”

”ワイ今大学の研究室いるんだけど、横で植学系の教授達が張り付いて見てるわ”

”草”

”何で?”

”ただ森の中を歩いている映像でも、研究者にとったら異世界の植生を見れる貴重な記録だし”

”ワイは作業配信代わりにつけてたで”

”そもそも何で山登ってるんだっけ?”


「探索するにもまず周囲の状況がわからないとどっちに進むか決めれないだろ?」

「もっと登りやすそうな山もあったじゃ無いですか。」

「せっかくだったら1番高い山から一望したいじゃないか。」



"子供?"

"まあ冒険メインのチャンネルだから…"

"ジト目のシエスたん可愛い“


「ありがとうな、シエス。こんな俺に付き合ってくれて。」

「まあ私も楽しいですし良いですけどね。私には貴方しかいませんし。」


"ああああああああぁぁぁー!"

"ぐああああああ"

"尊すぎて脳が焼かれた"

"もう一周回ってユニコーンすら湧いてないの草"

"もうカップルチャンネルに変えたら?"

"この二人に関してはもう男女の仲を越えた何かを感じる"

"相棒的な?"

"それだ"


「コージさん、何かコメント欄が騒ついてます」

「なんでだ?」

「さあ?」



"しかもさ、自覚ないんだぜ?"

"二人とも変なところで鈍感というか・・・"

"結果脳を焼かれたリスナーだけがいつも残る"



ついに二人は岩の天辺に手をかけ、二畳程の平坦になった山頂に登り上がる。



「おおー!」

「絶景だな!」



”すげえ”

”これは絶景”

”久しぶりに登山行きたくなってきた”





ぐるりと周囲を見渡す。


眼下に連なる青々とした山々

排気ガスの穢れを知らぬ雲一つない蒼穹の空

山地を挟んだ反対側には短草や低木が目立つ広い草原地帯が広がり、手前側の奥には地球では考えられないような巨木の森が地平線まで続いている。



「うん、いい景色だ。」



”ステップっぽいな”

”なあ、あの森の木でかくね?”

”この距離であれだけでかく見えるのおかしくね?”

”こういうの見るとやっぱ異世界なんやなってなるわ”

”こちら研究室、教授たちが血走った目で画面拡大してへばりついてる”

”草”



「私たちが潜って来たダンジョンはあれですね?」


ここよりもずっと低い山の山頂、ぽっかりと空いた木々が無いスペースにある巨大なゲートを指差して見る。


巨大と言っても常人だったら目を凝らして見えるか見えないかのギリギリなのだが、その常人に当てはまらない二人には労せず見えた。


まあ二人のうち一人はそもそも人間ではないのだが・・・・。





ギュルル

二人のお腹が同時に鳴り響く。



「お腹減った〜」

「俺も〜。飯にしようぜ。」


折り畳み式の網を置けるタイプの形をした、着火術式を組み込んだ焚き火台をマジックバックから取り出し、炭を乗せ火を起こす。


"マジックバック良いな・・・"

"これがあったらダンジョン狩猟もずっと楽になるからぞ・・・"

"持ってるん?"

"たまたま宝箱から見つけたんよ"

"やっぱハンターも結構見てるんやな"

"てかコージが持ってるの時間停止系でしょ?わざわざ火を起こして焼く必要ある?"


「わかってないなあ。景色を見ながら焼くのが良いし、楽しいんだろうが。」


コージと呼ばれた男は登ってくる途中襲ってきたのを狩ったクルクックの腿肉を出し、適当な大きさに切り分けてから竹串に刺していく。

ネギ(厳密にはダンジョンに生えているネギっぽい山菜)を間に挟んだものも用意する。


その間にシエスと呼ばれた女はカメラに映らないようにミスリルチョークで地面に何か模様を描いていく。




「シエスは塩?タレ?」


「私はタレで。」


「てか、お前真っ昼間から酒飲むつもりかよ・・・。」


「いいじゃないですか、酔うわけでもないし。」


「アル中め・・・」


「酒は人類の友ですよ。コージさんは飲まないんですか」

 

「飲む。」 


「よく私のこととやかく言えましたね・・・。ビールでいいですか。」


「うん、お願い。」



火加減がほど良くなったのを見計らってコージが網に串を載せる。


片側が焼けたらひっくり返しもう片側を焼き、市販のたれを付けまた焼く。



”うまそう・・・”

”腹減ってきた・・・”

”クルクックか。普通に鶏肉みたいで美味いんだよな。”

”クルクックって強いん?教えて有識者”

”中位ってところやな。Aランクハンターがパーティ組んで戦う相手”

”へえー・・・あれ、普通に強くね?”

”こいつらがおかしいだけだから・・・・”

”竜を二人で狩るような化け物を一般ハンターと比べてはいけない・・・”



コージが肉を焼いている間に、缶ビールを2本取り出したシエスは、それを地面に描いた模様の中心に置く。


すると模様の周辺の空気が急に冷たくなり、缶に霜が降りる。




「よし、クルクックの焼き鳥、焼けたぞ~。」


「おお、良いやけ加減ですね~。」


缶ビールを開け、串を手に取る。


「それじゃあ、ダンジョン攻略と異世界進出を祝して、

             「乾杯!」」


”乾杯”

”乾杯”

”乾杯”

”乾杯!”



焼き鳥を食いながら、ビールを呷る。


「ぷはー!やっぱ焼き鳥にはビールだわ。」


”言動が完全におっさんで草”

普通にバーベキューしてるけど、ここモンスター闊歩する異世界やからね?”


「いや、おっさんだし。」


”いや、その顔でおっさんは無い”

”なんだ喧嘩売ってるんか?”


”5000¥ 初見です。大変仲がよろしいですが二人はいつ出会ったんですか?”



「おおスパチャありがとう。うーん・・・・あれ?そういえばこういうの話したことないな?」


「そう言われればそうですね。」


"確かにそうやな"

"そもそもコージが正式に出るようになったのが最近やしな"

"気になるわ"




シエスの方をチラッと見るがお前が話せとでも言いたげなアイコンタクトを送ってくる。

 

「そうだな、あれは…」







空を飛ぶ鳥型モンスターの鳴き声が山地に響き渡る。



二人の冒険者とドローンは厳しく、美しく、雄大な自然の中、焚き火台を囲う。











これは、ダンジョンが出現しモンスターが生息する世界を生き探索し狩猟し、旅する、二人の冒険者ハンターの物語である。











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初めまして!高校2年、浅葱乃空あさぎのそらと申します。

 

初作品です!

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