secret sleep1⚘今日も眠れない。

1

 なんで離れないといけないの?

 やだ、やだよ。


 私達はお互いの頬に両手で触れる。


月籠つきかご高校で会おうな」


「うん」


 中2の夏の終わり。

 私は玄関の前で義兄のそらくんと約束した。


 だけど、高校1年生になった今でも、まだ会えていない。


 暗闇のベットの上で一人、両手で顔を隠して泣くだけ。


そらくん…どこ?」

「会いたいよ…」


 そらくんは今日も、私を眠らせてはくれない。



「ふわぁ…」

 私、花城雪乃はなしろゆきのは通学電車の中で欠伸あくびをした。


 今朝もサラリーマンやら学生やらで車内はギュウギュウで、

 つり革掴んだ右手はピリピリ痺れてきて痛い…。


 う…よくこんな状況で欠伸あくびなんか出来るなっていう視線を感じる…。


 だ、だって仕方ないじゃない。

 毎朝、5時に起きてるから眠いんだもん…。


 目の前の窓ガラスを見ると、

 地味な私が薄っすらと映っている。


 髪はボサボサの黒のロング、

 グレーのブレザーに籠の中に入った月のエンブレム、

 ピンクとグレーチェックのリボン、

 リボンと同じ柄のスカート。


 随分この格好にも慣れてきたなぁ…。

 制服可愛いのに似合ってなくて悲しい…。


 更に月籠つきかご高校は偏差値低いから周りにヤンキーガールとヤンキーボーイしかいなくて誰も話しかけて来なくて、

 今ではクラスでぼっち生活を送ってるけど…。


「はぁ…」


 肝心なそらくんとは、まだ会えてない…。


 私は見えないように首に付けたネックレスに左手で触れる。


 このインゴットの裏に雪の結晶のシールが貼られたシルバーのネックレスは、離れ離れになる前にそらくんに買ってもらったもので、

 “外すな。ずっと付けてろ”

 って言われて、お風呂と寝る時以外は付けてるから、会えたらすぐ見せようと思ってたのに。


 いずらい家にいる時間短縮出来て良かったけど、

 一番は、義兄のそらくんとの約束を果たす為に家から遠い月籠つきかご高校を受験したのにな…。


 一応、同じクラスに黒沢宙くろさわそらっていう男の子がいるんだけど、まだ休んでて一度も会ったことないんだよね。

 担任の望月もちづき先生に思い切って聞いたら、紫髪で遊び人らしく、いつかは来るんじゃないか? って感じで…。

 そらくんは黒髪でそんなチャライ感じじゃなかったし、同姓同名の別人かも…って今では思ってる。


 もう4月も終わりだし、

 そらくんと再会するの諦めかけてて、

 望み薄いけど、

 今日こそ、会えるといいな。

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