Ice lolly1⋈リボンほどいて。

1

 お願い。

 誰か、

 心に絡まったリボンほどいて。




「あぁ、今日も暑いな」

 放課後の空の下、孤独に歩道を歩いている私は、星野ほしのありす、17歳。


 飾紐りぼん高校に通ってて、

 半袖のセーラー服にピンクのリボン、

 チェックの薄い灰色とピンクのスカートは可愛くていいけど…、


 黒のふわロングのウィッグ外したい。

 だけど外せない。


 “氷雅ひょうがお兄ちゃん”との約束だから。


 お母さんの母はイギリス人で、

 日本人の祖父と結婚して黒髪のお母さんが生まれた。


 そしてお母さんは日本人のお父さんと結婚したんだけど、

 私とお兄ちゃんは祖母の遺伝で髪の色が金髪っぽい。


 だから地味な変装みたいな感じで登校する時は必ず黒のウィッグ被ってるんだよね。

 高3の氷雅ひょうがお兄ちゃんは気にせず金髪のままだけど。


 …あ、夕方なのにせみまだ鳴いてる。

 寝不足だから余計にうるさく聞こえてイライラする。

 今日から7月だもん、当たり前か。


 私は今年で高校2年生、つまり来年は受験生。


「はぁ…」


 このままマンションに帰ったら氷雅ひょうがお兄ちゃんに言われて、

 今日も嫌々遅くまで大学の受験勉強することになるんだろうな。




「ありす、おい、起きろ」

 深夜前。氷雅ひょうがお兄ちゃんが部屋にアイスコーヒーを持ってきてくれた。


 マンションは15階建てで私達は5階の部屋に住んでいて、私の部屋はシンプルでエアコンに学習机とベットだけある。


 氷雅ひょうがお兄ちゃんは、さらっとした金髪に整った顔。片耳にはピアスをつけ、グレーの長袖のTシャツに長い紺色のアンクルパンツ。

 話し方はいつもぶっきら棒。


「あ、氷雅ひょうがお兄ちゃん…」


「寝てんじゃねぇよ。これ飲んで頭冷やせ」


「うん、ありがとう…」


「でもまぁ」

「寝られるってことは第一志望の一流大学、余裕で合格出来そうだな」

 氷雅ひょうがお兄ちゃんはそう言って私の頭を優しく撫でる。


「寝てんの邪魔して悪かったな」

「…ありす、頑張れよ」


 氷雅ひょうがお兄ちゃんは部屋から出て行く。

 ぱたん、と閉まる部屋の扉。


 氷雅ひょうがお兄ちゃんに撫でられた頭、ズキズキする。



 私は自分の髪が嫌い。

 こんな金髪っぽい色じゃなかったらウィッグつけずに、みんなみたいに普通に登校出来るのに。

 アイスコーヒーみたいな黒色だったら良かったのに――――。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る