力を合わせて



 セリナの魔力が一気に膨れ上がり、ヴァルノスの闇の力を引き裂こうとしている。だが、ヴァルノスは依然としてその冷徹な笑みを崩さなかった。


「ふ、ふざけたことを。お前の力で私に勝てると思っているのか?」

 ヴァルノスの手のひらから黒い雷が迸り、セリナに向かって襲いかかる。その雷は恐ろしい速度で迫り、セリナの周囲に雷の嵐を巻き起こした。だが、セリナは一歩も引かなかった。


「みんなの力を信じる!」

 セリナの声が震えながらも強く響いた。その瞬間、悠、リリア、そして彼女が信じる仲間たちの力がセリナに集まり、彼女の魔力をさらに引き出す。悠は全身に魔法の力を込め、リリアもその剣に輝く魔法を込めて、セリナを支える準備を整えていた。


「いくぞ、みんな!」

 悠の一言と共に、セリナの周囲の光が一瞬で増大し、まるで太陽のような輝きを放ち始めた。その光はヴァルノスの闇を次々と切り裂き、彼の防御をも凌駕しようとする。


 ヴァルノスはその光の勢いを見て、初めて表情を歪めた。まるで、想像もしていなかったようなその光景に、ほんの一瞬の隙間が生まれる。


「そんな…馬鹿な!」

 ヴァルノスは叫びながら、力を振り絞り、闇の魔法を全力で放つ。しかし、その力がセリナの光の波動には全く届かず、逆にその闇が弾けて消え去っていった。


 その瞬間、セリナは今までにないほどの強力な魔法を放った。それは、彼女自身のすべてを賭けた一撃だった。


「これで終わりだ!」

 セリナの魔力が一点に集中し、その魔法はヴァルノスに向かって放たれた。ヴァルノスは必死に防御しようとしたが、すでに遅かった。セリナの魔法が、ヴァルノスの身体に直撃した。


 その衝撃で、ヴァルノスは倒れ、地面に膝をつく。闇の力が消え、世界に再び光が戻った。


「なぜ…こんなことを…」

 ヴァルノスはうめき声を上げながら、セリナを見つめた。だが、その目に恐怖はもう無かった。彼の体から流れる闇は、もう動くことはなかった。


 セリナは息を荒げながら、その場に立ち尽くす。彼女はかろうじて魔法を発動した後、体力を使い果たしていた。足元がふらつき、倒れそうになった瞬間、悠が彼女を支えた。


「セリナ、大丈夫か?」

 悠は心配そうにセリナの顔を覗き込んだ。セリナは微笑んで、少し恥ずかしそうに答えた。


「うん、大丈夫。みんなのおかげで勝てたんだ。」

 セリナの言葉に、リリアも穏やかな笑顔を浮かべて頷く。彼女はセリナを支えるために駆け寄り、優しく手を差し伸べた。


「本当に、お疲れ様。私たちも、頑張ったわね。」

 リリアの言葉に、セリナは改めて仲間たちの存在を感じ、安心した。


 その時、倒れていたヴァルノスがゆっくりと立ち上がり、息を整えながら言った。


「これで終わりだ。だが…お前たちには、まだ知らないことがある。」

 ヴァルノスは息をつき、そして今までとは違う真剣な表情で続けた。


「私がただの魔族の一員だと思うな。私の背後には、もっと恐ろしい者たちがいる。」

 その言葉に、悠たちは思わず緊張した。ヴァルノスが言いたいことは、きっとただの脅しではない。


「その者たちが現れる時、どんなことになるか…覚悟しておけ。」

 そう言い残し、ヴァルノスは消えていった。



次回予告:「真実の先」

 ヴァルノスの消失から一息ついた悠たち。しかし、その背後には世界の真相が迫っていた…。次回、待ち受ける新たなる未知とは!?

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