ゴヲスト・パレヱド

夢咲蕾花

【壱】鬼の鼓動

プロローグ 白い狐の導き

 小さい頃、大人たちに入っちゃいけないよと言われた薮があった。

 そこは禁足地と言われる場所で、入ったらおばけに祟られると言われていた。


 けれども少年には関係なかった。

 大好きだった母が死んだ。その現実が心にも体にも重くのしかかり、祟りでもなんでも良いから死にたいと思ってしまったのだ。

 生きる気力が湧かず、もうどうにでもなれとばかりにその禁足地に向かった。


 ふらふらと藪に入って行こうとするそんな少年を、一匹の狐が止めた。

 白くてふわふわの毛をした、五本のしっぽがあるかわいい狐。大きくて柔らかそうな毛を風に靡かせ、紫色の瞳でじっとこちらを見ていた。


 少年は狐が気になって、その狐がいる方に向かって歩き出した。それは紛れもなく生ある世界への帰還だった。

 やがて狐は、凛とした少女の声で言った。


「強く生きなさい、懸命に」


 それが、少年――漆宮燈真が、妖怪を好きになるきっかけだった。

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