第12話

何だろう・・・・・・?

すっごい人だかり。


「おっ!そろそろサッカー部の練習が始まるな」


見るとそこだけ、まるで「アイドルのサイン会か」って思うくらい、女子たちの取り巻きでいっぱいだった。


「知ってた?トオル サッカー部員なんだぜ」

「へぇ そうだったの~?」


そうか。

そういえば、去年もこんな光景みたんだっけ。

あのときは何の騒ぎかなって、思ってたんだけど・・・・・・?

今思えば、納得。


「トオルくんってすごいよね~ あれだけの女子の誘いを断ったことないって」

「あぁ そうだな。オレには、本気まじ 真似出来ないぜ」


真似してほしくないけど。

それに・・・・・・。

リョウちゃんがこんなタイプだったら、サオリが困るよ~。


ちょうどそのとき、サッカーボールが転がってきた。


「よっ!と・・・」

リョウちゃんがそれを軽く受け止めた。


「去年、トオルに『サッカー部に入らないか』って誘われたんだけど・・・・・・」

「せんぱ~い! ボール取ってくださ~い」


新入生らしい部員が、こっちへ向かって手を振っている。


「OK~! 行くよ~!」


華麗なボール裁きで、サッカー部のグラウンドへ蹴った。

それを見た部員たちは、「すげ~」ってビックリしていた表情だった。


元々、運動神経が良かったリョウちゃん。中学のころは、「空手部」に入部して、全国大会で優勝したこともあったんだよね。

でも、何で辞めちゃったんだろ・・・・・・?

前に訊いたときは、「生活の為」だとか言って、高校に入学したと思ったら、さっさとアルバイトを始めちゃったし‥―――。


「じゃぁ 行こっか」

リョウちゃんが、先に歩き出した。


今のリョウちゃんは、中学のころとは比べものにならないくらい優しくなった。

こうやって毎日、一緒に帰ってくれるし。

あのときは、反発してばかりだったもんね。


リョウちゃんは、サオリのこと・・・・・・。

どう思ってんだろ‥―――?


ふと、リョウちゃんの後ろ姿を見ながら、そんなことを考えていたら・・・・・・。

「歩くのが遅い」って、私の手首を掴まえた。


そのとき、ほんの一瞬だけ・・・ 胸が高まった。




ドキドキドキドキ・・・・・・。



何‥―――?

初めて感じる胸のときめき・・・・・・?


そっか・・・。

背が伸びたんだぁ~。

手もがっしり大きくて、力強くなってる。

4年前に会ったときは、全然そんな風に思ってなかったのに。


もしかして、サオリ今・・・。

リョウちゃんを「男の子」だって意識してる・・・?

よく「友達以上」なんて言葉を聞くけど、これって・・・。

そうなのかな??

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