エロゲ主人公のかませ役に転生した俺、モブちゃん達と幸せになることにした
はるのはるか
第1話 華麗なる序章のはじまり
ある日の朝、目が覚めると前世の記憶が舞い込んできた。
ラルズ・バートン、それは俺が前世でやりにやり込んでいたエロゲに登場するキャラだ。
今日この日、ラルズ・バートンというかませ役がエロゲ主人公のアルデン・オーラーンに叩きのめされ、華麗なるハーレム展開の幕を開ける──。
学院内にてラルズが主人公アルデンに対して煽ったことが発端で、この二人の決闘が決まった。
元々実力がなかったアルデンは、この決闘で魔法が覚醒し、そしてラルズが敗北する。
才能を見せたアルデンには、学院の数多の美少女が寄ってハーレム展開へと進んでいく──というストーリーだ。
俺には今、前世でのエロゲの知識と今世のラルズ。バートンとしての記憶がある。
プレイヤーとしてエロゲをプレイしていた時は、序盤で姿を消すモブキャラでしかないラルズの心情は当然のように表現されていない。
それを込みで言わせてもらうと、俺(ラルズ)は主人公のアルデンを煽ってはいない。
アルデンと俺が初めて接触したのは、学院でのとある講義の後のことだ。
唯一の魔法講義を受けたとき、終了後にアルデンが教科書と睨めっこをしていたのを見かけた。
ただの一時の感情による親切心で悩んでいるであろうところを教えてやったのだ。
それがもしかしたら、彼には俺が上からものを言っていたように聞こえたのか、煽っているように聞こえたのだろう。
その数日後、突然にして学院の正式な決闘をアルデンが申し込んできた。
彼が魔法専攻である以上、もちろん魔法戦を申し込んできた。
学院へ足を運ぶと、全生徒から視線を注がれる。
それは当然今日のメインイベントの脇役が俺だからだ。
いや、この時はまだアルデンが学院で有名なわけではない。
これから有名になる。
決闘の場として指定されたのは、学院内にある屋外の闘技場だ。
俺よりも先に待機していたアルデンが俺の顔を見て睨んできた。
エロゲでも主人公アルデンはどちらかと言うと攻撃的な一面を持っていた。
正義感に溢れた好青年が力の覚醒をすれば、そりゃ美少女たちにモテるんだろう。
しかしどうせエロゲの世界に転生したのだ、俺だってこの決闘が終われば好き勝手やらせてもらう。
アルデンに群がるメインキャラは全員アルデンにデレデレだから手は出せない。
ゲームの世界にはメインキャラ以上にモブキャラが多く存在する。
メインキャラに隠れているだけでモブにも可愛い女の子はたくさんいる。
はぁぁ……早く決闘を終わらせてモブちゃんたちとイチャイチャしたい!
「──ラルズ・バートン!その卑しく僕を見下す顔は今後も多くの人々を悲しませる。だからここで僕がお前を倒す!」
とんでもない罵倒をしてきた。これが物語の主人公とは信じられない。
エロゲをプレイしていたときはアルデンと同じ気持ちでいたが、こうしてラルズ自身になってみると有り得ないくらいの理不尽さだ。
「これより、挑戦者アルデン・オーラーンとラルズ・バートンの決闘を開始する!」
審判の宣言により、決闘が開始されたと同時にアルデンは手を構えた。
魔力がボール状で浮遊し、こちらへ飛んできた。
魔力を直接飛ばして攻撃するのは魔法の初歩的な技だ。
それもアルデンの魔力量では高が知れている。
同じく魔力の塊を形成して即座に真っ向から飛ばした。
互いの魔力が衝突し、激しく爆発が起きた。
アルデンの性格は言うなればまさしく少年漫画の主人公のよう。
彼の中に諦めるという言葉は存在していない。
「もっと!もっとだ……!」
質は平均以下であるが、ただ気合だけで量を爆発的に増加していくアルデン。
その分だけ俺も魔力を飛ばしていく。
ラルズ・バートンは一介のモブキャラではあるものの、主人公が最初にぶつかる壁であるためそれなりに情報もあった。
学院内では人並みより多少の実力があり、魔力量も主人公アルデンより多い。
主人公が越えるべき壁としてはまさに厚すぎず薄すぎず最適といえる。
互いの攻防は次第に俺の方に分があり、全てを相殺しきれないアルデンを俺の魔力が直撃した。
後方へ吹っ飛び倒れた。
どちらかの意識が途切れるまで審判は決断しない。
この決闘は殺傷行為を抑制するような生ぬるいものではなく、ルールには『降参の意を示すか、相手を気絶させるか、または殺すことで決着をつける』とある。
数秒経っても起き上がることのないアルデン。
俺はそこへ、追い討ちをかけるように魔力を数弾飛ばした。
同様にして魔力が爆発した。
しかし、立ちこもる煙の向こうには一人の人影が見えてきた。
この瞬間こそが、アルデンが覚醒を見せたシーンだ。
人の高さを超える巨大な水流による渦が顕現され、その中心にアルデンがいた。
まるで水に守られているかのように、俺と彼との間に水の壁ができている。
これがアルデンの覚醒した属性の力。
もしくは真の魔法とも言われる力だ。
ただ魔力を飛ばすのではなく、形質変化から魔法を具現する力こそが本当の魔法だ。
逆境から這い上がり真なる力に目覚めた主人公そのものと言える。
荒れ狂う水流がものすごい勢いでこちらへ向かってきた。
俺は魔力で壁をつくり、自らをガードすることを試みる。
ただの魔力と魔法とでは、似て非なる完全異種の存在だ。
一時も耐えることなく、脆く崩れた魔力の壁の次に、俺の身体に直撃した。
後方に吹き飛び、石の壁に激しく衝突してから俺の意識は一時的に彼方へ飛んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます