第23話 2024年アニメ映画評22・「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」
本作の時系列は「ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP」の一年後から二年後で、01世代が主役だ。主人公は、当時のクラシック五強の一角・ジャングルポケット。スコアは7点くらいか。なお、いろいろ事情があるのか、00世代は飛ばされている。多分、この世代で一番目立っていたアグネスデジタルがマル外ゆえクラシックを走っていないのが理由だろう。マル外のクラシック解禁は01世代からである(だからクロフネはクラシックを走っている)。
01世代の五強とは、ジャングルポケット、アグネスタキオン、ダンツフレーム、マンハッタンカフェ、クロフネを指す。クラッシック三冠の勝ち馬はそれぞれ、皐月賞がアグネスタキオン、日本ダービーがジャングルポケット、菊花賞がマンハッタンカフェ。権利の関係があるのか、あるいはダートで名を馳せたからなのか、クロフネは登場せず、代わりに、ペリーなる、ああ黒船から来てんのね、という名前のモブが出てくる。
フリースタイル・レース(って何?)を走っていたジャングルポケットがフジキセキに憧れてトレセン学園に入学するところから話は始まる。喧嘩っ早い性格のポッケだが、トレーナーとフジキセキに支えられ、日本ダービーを制す。しかし、以降調子が上がらず、菊花賞敗北を機に練習もサボりがちになる。みかねたフジキセキが彼女にレースを申し込み、一緒に走ったことで苦悩が晴れる。復活したポッケは、ジャパンカップで接戦の末、世紀末覇王に勝利を収める。
映像は前作同様、レースが凝っていたなあ、という感じ。ただ、やはり競争シーンが短い。もっと長くしていいのに。特にジャングルポケットとテイエムオペラオーの競り合いは長く観たかった。いやにあっさり終わった印象で、そりゃ本物の競馬は意外にさっくり終わるんだが、アニメだしええやん。
主眼はジャングルポケットの挫折と成長で、日本ダービー優勝と、その後の燃え尽き症候群からの復活およびジャパンカップ制覇の二部構成。いずれも高い壁を失うことが物語上のキーで、前半ではアグネスタキオンの引退が、後半では日本ダービー優勝がそれに当たる。同じことを二回している感じだが、前半はアグネスタキオンに代わる目標を見つけて突っ走れたものの、後半ではそれ以上の壁や程よいライバルが見つけられず苦悩するので多少ずらされている。
とはいえ、ライバル不在が課題と言われても、他に速い馬がいるしなあ、となってあまり腑に落ちない。恐らく、ある程度の関係性があるライバルでないと盛り上がらない、という意味なんだろう。「幽遊白書」の躯みたいな奴だ。最終的にはフジキセキと走って誰かのために走るということで吹っ切れたが、まあ、そんなもんか。ただ、ここら辺は少し記憶が曖昧だから、もっといいことを言っていたかもしれない。
フジキセキやアグネスタキオンから刺激を受けるばかりだったジャングルポケットが、自身の走りでその二人に逆に影響を与えるというのが物語の流れ。フジキセキに至っては、ポッケから影響を受けた後でまた彼女を感化しており、循環的展開を担う。
ちなみに、フジキセキとジャングルポケットは史実だと馬主から主戦騎手に至るまで馬に関わる人員がほぼ同じで、当時も弥生賞を最後に怪我で引退したフジキセキの雪辱を晴らすという論調があったようだ。
アグネスタキオンやマンハッタンカフェの設定は結構奇天烈で、馬主に怒られなかったのかとは思う。まあ、陰キャなだけのマンハッタンカフェはともかく、アグネスタキオンは最強のウマ娘を作るとかいうよう分らん動機で引退するし(怪我が理由の一つでもある)、結局それを後悔するのだから、何じゃコイツとはなる。一応、筋は通っており、自身の欲望に気づかぬゆえの過ちという近代的主題を内包しているのだが、モデルからするとそんなにいい気がしないようにも感じる。
まあ、この二人は扱いがいい方で、クロフネはともかく、ダンツフレームはこれでいいのか、と心配になるくらい出番がなかった。映画の尺じゃ仕方ないけど……。でもよく思ったら、GⅠで勝ち星を挙げられなかったダンツフレームが、最後の最後に宝塚記念で優勝するという流れも感動的だった気がする。ただ、ナリタトップロードと似た流れではあるか。
それはそれとして、オペラオーはもっと最強さをアピールしてほしかった。史実を知らないと、あの馬の凄さがよく分からんだろう。
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