盗賊スキルを持っていたからと家を追い出されたから、夢だった義賊になることにする
シャルねる
第1話
「セフェリノ、お前には期待しているぞ」
高圧的な態度でそんなことを言ってくる目の前の男は今世の俺の父親だ。
こんな感じだが、仲は良好……な訳もなく、普通にこいつは俺の事を道具としか思っていないから、俺の方からも良い感情は覚えていない。
そして、こいつが言っている俺に期待というものは15歳になったら発現するとされているスキルの話だ。
発現するスキルっていうのは心の奥底で強く願っている夢に左右されるらしい。
だからこそ、貴族の子供は基本的に洗脳教育をされているのがほとんどだ。
なんでそんなことが分かるのかって? ……実際にパーティーとかで何回か貴族の息子だったり娘だったりと話をしたことがあるからだよ。
子供のうちにあんな思想に染まってるなんて、どう考えてもおかしいし、もっと根拠のある理由を話すとするのなら、俺の親もそんな感じだからだ。
もしも俺に前世の記憶が無く、ただの子供であったのなら、今頃は平民はゴミだという思想に塗れ、俺が育った家……ゼギュール家の繁栄の為に全てを捧げる、みたいな思想になっていたことだろう。
……実際、俺の弟はもうそんな感じの思想に染まってしまっている。
一応さ、俺だって可哀想だと思うし、真っ当な思想に戻れるように努力はしたんだ。
ただ、俺は何だかんだ自分のことで精一杯だったから、気がついた頃にはもう手遅れだったんだよ。
少しでも俺の言葉に耳を傾けてくれるのなら可能性はあったのかもしれないけど、それも無いからな。
「さぁ、セフェリノ、スキルを見せてみなさい」
素直に俺は発現したスキルを見せた。
「おぉ! スキルがこんなに、も……?」
その結果、父……だと思ったことなんて一度も無いけど、ともかく、血縁上の父の表情は一瞬喜びに満ち溢れていたが、直ぐに失望に変わっていた。
まぁ、予想通りだ。
父がこんな表情をするのも、俺がこういうスキルを発現させるのも、な。
「何故だ……? セフェリノ! 貴様は何故そんなスキルを発現させているッ!」
こいつがなんで怒っているのかも理解出来る。
単純に俺の発現させたスキルが一言で言うなら全部盗賊系のスキルだったからだろう。
せめてもう少しマシなスキルであったのなら、やりようはあったってところかな?
まぁそうだよな。
プライドの高い父のことだ。
実の息子がこんなスキルを発現させてしまっただなんて、怒鳴りたくもなるのだろう。
「何とか言わないかッ!」
血管が千切れるんじゃないか? ってくらい顔を赤くして、怒鳴り声を上げてくる。
まぁ、理由くらいは教えてやってもいいか。
自分の……自分たちの洗脳教育の意味なんて無かったんだってことは伝えてやりたいし。
「発現するスキルは心の奥底で強く願っている夢に左右される。常識ですよ? 父上」
「何をッ!? 貴様の夢は我がゼギュール家の繁栄のはずだろう!」
「くはっ!」
目の前のゴミの無様な姿に思わず笑いが込み上げてきてしまい、変な笑いが俺の口から出てしまった。
まだそんな言葉を信じているのか? ……いや、ただ単にまだ現実を理解できてないだけか。
そうだよな。
こいつにとって俺はそれはもう都合のいい人形だったはずだからな。
「何がゼギュール家の繁栄だよ。んなもんクソほどどうでもいいんだよ。俺の夢は昔っからただ一つ、義賊になる事だ」
「ぎ、ぞく、だと?」
前の世界ではこんなもの、ただの妄想……絶対に叶わない夢でしか無かった。
だが、この世界では違う。
実際に俺は義賊になれるであろうスキルを手に入れたんだ。
なりたいに決まってるだろ?
目の前にいるようなゴミから奪い、力が無く、奪われることしか知らないような人を助けたいんだ。
こんなの、ただのエゴでしか無いが、それが俺の信念……正義だ。
「そ、そんなもの! 許されるはずがないだろう!」
「お前が許さなくたって、俺が手に入れた力がそれを許してくれる」
「ぐっ……貴様はゼギュール家から追放だ! 金輪際二度とゼギュールの性を名乗ることは許さん!」
どうせ出ていくつもりだったんだが、そっちから言ってくれるのなら、そっちの方が都合はいいか。
「あっそ。じゃあ、さよなら」
「……縁を切ったとはいえ、血が繋がっているのは事実、盗賊紛いのことなんてしてみろ。必ず、貴様を処刑台に送ってやる」
なら、そんな椅子に腰を下ろしてないで、もう俺を捕まえるために今からでも動くべきなんじゃないかな?
俺は俺なりの信念でお前たちのようなクズから色々と奪うって決めてるんだぞ? 縁はもう切られたんだ。
家族じゃないのなら、何もせずに出ていく訳が無いだろう。
盗賊スキルを持っていたからと家を追い出されたから、夢だった義賊になることにする シャルねる @neru3656
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