迷い込んだ山小屋
迷い込んだ山小屋
城戸崎カヨコ
(2024年7月 オカルトラジオ内での怪談)
私の知人に怪談をやられてる方がいらっしゃるのですが、その方の経験した話なんです。
リョウちゃんって私呼んでるんですけど、リョウちゃんが中学生ぐらいの頃、地元の集まりでキャンプに行ったらしいんです。
リョウちゃんね、北関東に住んでたんですけど、その近くの山でね。O山って言う自然が凄い豊かな場所でね。すっごくいい所らしいんです。
日中はみんな川で遊んだりして過ごしてました。それから夜になったら、キャンプファイヤーをする予定になってたらしいんです。
そこでね、準備も全部自分達ですることになってて。森の方に薪を探しに行ったんです。
リョウちゃん、ずいぶん好奇心が旺盛な性格だったんです。だから、ここぞとばかりに森の奥のほうまで歩いていって。
ずうっと森をかき分けていくと、ちょっとした開けた場所に出たんですけど。
そこに汚い、古い小屋があったんです。
なんだかその小屋に凄く惹かれて、中に入ったそうなんです。
小屋は扉がしっかり閉まってたんですけど、リョウちゃんが近づいてよくみたら隙間があったんです。
どうやら鍵は閉まってなかったみたいです。
隙間に手をかけて力を入れると簡単に開いたんですよね。だから入り口から中を覗いたんです。
そしたら、写真がばら撒かれてる。
それもかなり大きいサイズで。
全部の写真に一人ずつ人が写ってるの。
何枚あったのかなって。
無造作に床に散らばっていて。
なんで誰も来ないような山奥の小さな小屋にこんな写真があるんだって、気持ち悪かった。
それで、警戒しながらもよく見ようと覗きこんだところで。急に誰かに声をかけられて、リョウちゃんびっくりして叫んじゃった。
その声は小屋の中から聞こえたって。
誰もいないと思い込んでたけど、誰かがいたのね。
電気も通ってない、こんな小さな山小屋にね。もう薄暗くなってくる頃だった。
まさか人がいる訳ないと思うでしょ。
物凄く大きい影だったって。
相当な大男じゃないか、って言ってたわ。
低い声で何か言ってたけど、パニックでよく分からなかったらしいわ。
それから走って逃げようとしたんだけど、その写真のうちの一枚に見覚えがあって、暫く動けなかったみたい。
その写真にね、リョウちゃんのお母さんが写ってたみたいなの。
リョウちゃんの母親はね、何年か前に失踪してたらしいの。ある日突然いなくなっちゃって。
別に夫婦仲は悪くなかったっていうから、全然心当たりもなくって。
自分が何かしたんじゃないかって自分を責めてたわ。
それから、リョウちゃんも一緒懸命探したらしいんだけど、見つからなくて。
そんな大切な母親の写真がなんでこんなところにって。
それもあってパニックになったのね。
リョウちゃん色んな感情が一気に押し寄せて、そこで気絶しちゃったみたいなの。
気がついたらキャンプ場のすぐ近くに寝かされてたって。
ええ、そのリョウちゃんがその後どうなったかって?
そうそう、私が昔に聞いたこの話をしたかったのと関係あるんだけど。
ついこの前怪談イベントで会った時にね、様子がおかしくって。
もう一度あの写真を見に行くって言ってて。大人になるまでずっとあの場所を避けてたみたいなんだけどね。
どうして?って聞いても教えてくれなかった。
そのすぐあとにね。
リョウちゃんは死んじゃったんです。
噂でしか聞いてないんだけど。
どこかの廃墟で一人で。
一人で首を吊ってたのが見つかったって。
その小屋の写真、今でもあるのかしら。
なんで死のうと思っちゃったんだろう。
その写真、リョウちゃんにとっては大切なものだったんじゃないかしら。
だからずっと覚えていた。
でも、それを見たからと言って自ら命を断つなんておかしいでしょ。
よくわからないお話でしょ?
私にも分からないわ。
リョウちゃんが何を思っていたのか、理解してあげたいんですけど。
なんだかとても嫌な気持ちになったわ。
そんなお話でした。
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