【デベロッパー・ルーム】
富蔵 晧月
序章 BOOT
燦々と太陽が照り付ける。
青い空の下、清らかな水が流れる川は決して干上がることはない。
永遠に川縁で釣りをしている男性二人はその場所から動くことはなかった。
魚のかからない竿を前に掲げながら会話を交わす。
「どうだ? 最近の畑の調子は?」
「全然だめだな。【ヤマイヌ】共が荒らしてきやがるからなぁ」
「やっぱりこの村も一人くらい【セイヴァー】を雇った方がいいんじゃないか」
「最近は常識が通じないヤバい奴も増えてきてるってんで村長が博打はしたくないって渋っているんだよな」
「確かに。だったら民間人向けの武装を揃えた方がいいという考え方もあるな」
二人ともお互いに顔を合わさずにひたすら竿を眺めている。
「俺たちが武装したとして倒せると思うか?」
「いやー俺たちには戦闘経験ないからなぁ。村の誰か一人でも犠牲になったら大ごとだ」
「やっぱり誰かを雇わなきゃ駄目か?」
「せめて元凶の【オオヤマイヌ】を何とかしてくれる人がいれば大助かりなんだけどなぁ」
男の片方の頭上に赤い[!]が浮かんでいた。
暫く無言になる。
二人は微動だにせず只々竿を立てて眺めている。
「どうだ? 最近の畑の調子は」
「全然だめだな。【ヤマイヌ】共が荒らしてきやがるからなぁ」
彼らはこの会話を延々と繰り返していた。
ふと、彼らの影から不自然に何かが蠢いていた。
ポコッと生み出された黒い小さな【何か】は二人の影を離れ、自ら意志を持って動き出した。
暫くその場ををちょこちょこ動いた後、一人の青年が【何か】を手に取った。
全体的に黒で統一された格好の青年は【何か】を黒い炎で焼き包んだ。
【何か】は苦しみことももがくこともせず静かに消えた。
「蝣ア蜻、…………番目の[]発見。」
「……者不在。知ってる」
永遠に代り映えのしない不完全な世界。
空虚な表情の青年はずっと同じ時を過ごしている。
「繧、繝エ 蜷帙?縺ゥ縺薙↓……?」
彼の口から発せられる言語も既に綻びている。
青年の目に光はなく、虚無の表情のまま俯いた。
~~♪
不意に世界に音が響く。
「この音は!?」
傾くことのない太陽に目を向けると
太陽の光越しに黒い影が落ちてくるのを視認した。
「……蟶ー縺」縺ヲ縺阪◆縺ョ縺 !?」
漆黒に染まった彼の瞳には微かな光が差し込んだのだった。
序章『BOOT』 END...
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