第41話
???「そういえば、皆さんって兄弟いらっしゃるんですか?」
ここは、冥府。たまたま、「桃時」と死神組組長「兎白」と死神組第一部隊一番隊隊長「瑠璃人」が休憩時間に冥府に来てたため、お茶をしている。そこへ、「紅緒」がお茶を出す際、質問した。
紅緒「あっすみません……言いたくなかったら良いんですけど……」
紅緒が慌てているのは、ここにいる者は家庭環境に難があるものが多いため、気を使ったのだ。
雨花「大丈夫だよ。気を使わなくても。わたしはいないね。」
橙「私もいません。」
桃時「アタシもいないわよ。」
兎白「俺も一人っ子だ。」
瑠璃人「オレは……」
ここで、とても驚くことが発覚する。
瑠璃人「妹が一人いる。」
「え」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」
瑠璃人「そ、そんなに驚くことか?」
橙「え!?妹さんいらしたんですか!?」
兎白「初耳だな。」
桃時「あんたがお兄ちゃん?全然想像できないんだけど……」
雨花「どんな子なのか聴いても良い?」
みんな瑠璃人の妹に関心が向く。
瑠璃人「えぇ〜。うーん超ガリ勉?」
桃時「が、ガリ勉?」
瑠璃人「後は親の決めたルールを超守る。……っていうか少しでも守らないと親がめっちゃ怒って追加の課題を入れられて……そういう狭い世界で必死に頑張ってる奴……かな?」
橙「え?でも確か瑠璃人さんの親は瑠璃人さんが大暴れして目を覚ましたんじゃ……?」
瑠璃人「「オレの」親はな。オレは愛人との息子。それで妹は本妻との娘。オレの妹は、一族の当主にさせられるために必死で勉強させられて、「完璧」というものを求め続けられている。そのために頑張り続けてる。……もうずっとな。」
雨花・橙・桃時・兎白・紅緒「…………」
紅緒「何か本当にごめんなさい……」
瑠璃人「ん?いやいや気にしなくて良いよ!!紅緒ちゃん!!みんなも暗い顔になるなよ!!」
雨花「でも瑠璃くんは気にしなくてもその妹さんは気にするんじゃない?」
瑠璃人「いやオレよく雨花や橙、桃時、兎白さんの話するんだよ。紅緒ちゃんの話も。いつも面白そうに聴いてるぜ。いつか会いに行きたいとか言ってたな。」
桃時「ちょ、何勝手にアタシたちの話してんのよ……!」
瑠璃人「え!?ダメだったか?」
桃時「いや別にダメとかじゃないけど……」
瑠璃人「桃時のことはツンデレだって言ってたな」
桃時「つ、ツンデレ!?」
雨花・橙・紅緒「あぁ……」
桃時「そこ三人!何納得してんのよ!」
兎白「ツンデレ……可愛いじゃないか。ツンツンしてからのデレ返し。」
桃時「……////……ってアタシは怒ってるの!!」
瑠璃人「そうそうこんな感じになってることを話したらめちゃくちゃ笑ってたな」
橙「こんな感じを……それはちょっと分かりますね……和むというか……ふふっ」
雨花「わたしたちのことを知って少しでも笑えてるなら良かったんじゃない?」
桃時「まぁそうね。うふふっ」
瑠璃人「そうだ!雨花のことみにいったことあるって言ってたな!」
雨花「…………え?」
瑠璃人「確か……」
瑠璃人はあの日のことを想い出す。
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???「はぁ……はぁ……確かこの近くのはず……」
激しく息を乱しているのは、瑠璃人の妹。━━━━━━━「海音(うみね)」だった。
海音「瑠璃兄が前に言ってた「雨花」っていう人……どんな人にも寄り添おうとしてるらしいけど……多分話を聴く限り……あの子は……でもさすがに会うのはまずいな……私の家の人にバレたら雨花に迷惑かけるだろうし……ちょっぴりみにいくだけに……」
海音は冥府に到着した。しかし……
海音「やっぱり中には入れないか……せめて外にでてくれれば……ってそんな簡単に上手くいくわけないし……、?」
海音の視線の先には、橙色に黄色いメッシュが入っている少女がいた。
海音「あ、あの子は「橙」!てことは、隣にいるのは……!」
丁度よく、「雨花」と「橙」が外部に用事があったため、外に出ていたのだ。
海音「あの子が……!」
海音は目を見開く。
海音は想った。
あの激しく上昇した私の心音。
あの子をみた瞬間感じたんだ。
あぁ、あの子はそういう子なんだ。心をそのまんま預けて優しく受け止めてくれる。抱き抱えてくれる。泣いて良いんだと想わせてくれる。そういう子なんだ。
そして、誰よりも……あの子は……
海音「……………あの子は……きっと……」
そして、たまたま、久しぶりに瑠璃人は家に帰ると何やら騒ぎが起こっていた。話を聴くと、「海音が黙って外出した」と海音の母親がヒステリックに暴れていた。帰ってきた海音は、思いっきり平手打ちされ、帰ってくるなり、部屋に閉じ込められ、勉強させられていた。
しかし、ちらっとみえた海音の目は出かけたことを後悔しているようにみえなかった。しかし、
瑠璃人「あの目は……橙の目と似てる」
後に、海音から事の顛末を聴き、瑠璃人は納得した。
瑠璃人「そうか……雨花に会いに行ったのか。……だから橙と似た目になってたんだな。あの……」
「「今にも何かがなくなるものをみている目に」」
海音「ねぇ瑠璃兄。あの子は……心配だ。光の届かない闇夜みたい。あの子はいつか……」
瑠璃人「…………お前はまず、自分の心配をしろよ。」
海音「私は大丈夫。瑠璃兄がいるから。」
海音は、優しく微笑み、自分の部屋に戻っていった。
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瑠璃人「…………」
橙「…………瑠璃人さん?」
瑠璃人「ん?いや何でもない。やっぱこの話無しにしてくれないか?」
桃時「はぁ?あんだけ話した癖に?」
雨花「…………まぁまぁ瑠璃くんにも話せることと話せないことがあるんだよ。これぐらいにしよう。」
瑠璃人「……ありがとう。雨花」
雨花「いえいえ!じゃあ解散!」
こうして、みんなそれぞれ仕事に戻っていき、瑠璃人も移動しようとしたその時……
雨花「あっ瑠璃くんちょっと待って!」
瑠璃人「ん?どうした?」
雨花「仕事終わったらわたし死神組の本拠地の前で待ってるから、受け取って欲しいものがあるの。」
瑠璃人「何を受け取るんだ?」
雨花「その時詳しく話すでも良いかな?」
瑠璃人「分かった。良いぜ。」
雨花「ありがとう!じゃあ後で!」
そして瑠璃人も、仕事に戻って行った。
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???「お待たせ〜!遅れてごめん!」
???「別にそこまで待ってないぜ。大丈夫だよ。」
死神組の本拠地の前で待っているのは、「雨花」と「瑠璃人」だった。
雨花「じゃあこれ。」
瑠璃人「何だこれ?」
雨花が渡してきたのは、かなり分厚い手紙だった。
雨花「妹さんに渡して欲しい。難しそうなら燃やしてくれて構わないから。」
瑠璃人「いやそんなことしないけど……どうして妹に?」
雨花は、後ろを向いて話し出す。
雨花「妹さんは、今、絶望を抱え込みすぎてるんだと想う。沢山頑張り続けてる。このままだと、もしかしたら……心が壊れてしまうかもしれない。今も事実、壊れかけてるのかもしれない。誰かが妹さんを見つけてあげないといけない。そして、妹さんが逃げたいと想った時に逃げ場所になれる人ができるならみつけてあげて欲しい。わたしは赤の他人だけどせめて逃避行先になりたい。……その子にはわたしみたいになって欲しくないから。」
瑠璃人「どうしてそこまで……?」
雨花は、「何も映っていない目」になった。
雨花「わたしはこれ以上クズになりたくないだけだよ。まぁわたしはクズにすらなれないけど」
瑠璃人「……分かった。必ず妹に渡すよ。」
雨花は元の目に戻り、こう言った。
雨花「ありがとう!」
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海音「瑠璃兄。これ雨花からなの?」
瑠璃人「あぁちゃんと隠しておけよ。」
そして、瑠璃人は早々に退出した。
同じ家族の人間とはいえ、愛人の息子が本妻の娘と関わっているのは知られるとまずい。
海音「…………読んでみよ」
手紙の内容は、こういうものだった。
『妹さんへ、こんにちは。初めまして!紫雲雨花です。いつもわたしたちの話で笑ってくれてありがとう!これぐらいの話で笑ってくれるならいくらでも話すよ?笑
話変えるね。今、妹さんはとても辛い状況なんだって、瑠璃くんから少し聴いてるよ。妹さんは、今頑張ってるんだよね。必死で。足掻いてるんだよね。わたしなんかの他人なんかに言われても他人事でしょって想うかもしれないけど、瑠璃くんから話を聴いた時、妹さんには、その場から身動きが取れなくなって、苦しくなって、そうなったら、できるならそうなる前に、わたし個人的には逃げて欲しいと想ったんだ。他の誰でもない妹さん自身ために。逃げても良いと想うんだ。もしかしたら、「そんなこと出来たらしてる」それか、「何で自分が逃げなくちゃいけないのか」とか考えるかもしれない。でも、この世もあの世もいつだって、絶望と隣り合わせで、やっぱり逃げなくちゃいけないこともあると想うんだ。悔しいかもしれない。本当に苦しいかもしれない。でも、わたしはあなたにどうせなら幸せになって欲しい。わたしが逃げ場所になりたい。必ずあなたの逃避行先になってみせる。約束する。……ごめんね。余計なお世話かもしれないけど、でも、幸せになって欲しいから。幸せになってね。絶対に。わたしが手伝うから。自分の幸せを投げ出さないで良いんだよ。休んだって、遠回りしたって、逃げたって、傷つけたって良いから。幸せになって下さい。雨花より。』
手紙には、雨花の家の住所と電話番号も書かれていた。
海音は、読み終わると、大きく深呼吸をして、そして……
海音「……………/////////」
海音は嬉しすぎて激しく照れた。
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瑠璃人「はいこれ、海音から」
雨花「おっ!ありがとう!」
瑠璃人「いやぁお前らがまさか文通相手になるなんて想わなかったなぁ」
雨花「海音ちゃん色々話してくれるよ?可愛いね!」
そう、雨花と海音は瑠璃人を通して文通相手になったのだ。
雨花「でもごめんね?瑠璃くん毎回手紙持ってきてもらっちゃって」
瑠璃人「それ海音からも言われたけど、あいつ携帯持ってないし、仕方ねぇよ。それにお前らが楽しそうにしてるんならそれで良いんだよ。オレは。」
雨花「あはは!ありがとう!」
こうして、雨花に友達が一人増えて、海音は苦しい毎日の中一つ楽しみができたのだった。
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