第21話

???「では今日はこれで失礼しますね」

???「うん!お疲れ様!」

???「お疲れ様です。紅緒さん」


ここは冥府、紅緒は仕事を終え、帰りの身支度をしていた。そして上司である「紫雲雨花」と「不山橙」に挨拶をしていた。


雨花「あっそうだ!紅緒ちゃん!これあげる!」


紅緒に雨花が渡したのは雑誌だった。


紅緒「これは?」

雨花「前に女子力上げたいって言ってたでしょ?これ私がよく読んでるファッション雑誌なんだけど他にも料理のこととか恋愛のことの質問コーナーとか書いてあって女子力上げやすいかなって!だからあげる!」

紅緒「良いんですか!ありがとうございます!」

橙「それからこの饅頭。先日の補佐官会議の時に貰ったものなんですけど沢山あるので貰って貰えませんか?」

紅緒「これって天国産の小豆が入った饅頭じゃないですか!貰っちゃった良いんですか?」

橙「はい、寧ろ貰ってくれた方が助かります。」

紅緒「ではありがたく貰いますね。」


「では、これで。」と紅緒は帰っていった。しかし、雨花から貰ったこの雑誌を巡ってあんなことが起こるとはこの時は誰も知らなかった。今回の話は紅緒兄妹の話である。


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紅緒「ただいまぁ」

???「あら、おかえり〜」

???「おーわざわざこっちに帰ってきたのか。疲れてるだろ?手洗ったら早く休めよ?」

紅緒「分かったよ〜紅蓮お兄ちゃん。あと今日泊まって良い?紅葉お姉ちゃんの枕貸してよ。沢山持ってるんだし良いでしょ?」


ここは、紅緒の実家である。そして紅緒と話しているのは紅緒の兄である紅蓮と姉である紅葉。


紅葉「別に良いよ〜ていうかなんで今日こっちに帰ってきたの?」

紅緒「あぁ実は上司から天国産小豆の百華饅頭貰ったからお姉ちゃんたちにあげようと想って。」

紅蓮「えっ天国産の!?高すぎて中々買えないで有名なあの饅頭だろ!?良いのか!?」

紅緒「良いから貰って来たんだよ?後で一緒に食べよう!」


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紅葉「うぅーん美味しい!!さすが天国産だわ!めっちゃ美味しい!」

紅蓮「おぉー確かに美味しいな!」

紅緒「うん、美味しいね。」


三兄妹は饅頭を頬張っていたが、一度その手を止めて話をし始めた。


紅蓮「最近どうだ?前に「通り妖魔」のことで色々あったって聴いたが……今は少し落ち着いたか?」

紅緒「うーん、まぁ少しは落ち着いたけど今までずっと「通り妖魔」のことで頭がいっぱいだったから今はそれからほんの少し解放されたけどこれからどうやって生きていけば良いのかよく分からないかな……」

紅葉「紅緒の恋人さん。今は幸せに暮らしてるみたいだよ。…………新しく恋人を作って……」

紅緒「そっか。良かった。あの人が幸せならそれに越したことはないよ……笑」

紅蓮「…………っ!!もう我慢できない!!」

紅緒「!?、えっどうしたの!?」

紅蓮「だってよ!なんか紅緒だけ置いてきぼりみたいじゃないか!お前はあんだけ恋人のこと考えて、めちゃくちゃ愛してさぁ!それなのに紅緒だけ幸せになれてない気がする!こんなのおかしいだろ!」

紅葉「…………紅緒。もし、また新しく好きな人が出来たらその時も恋人さんのこと考えると想うけど後ろめたさなんて感じなくて良いの。自分の気持ちに正直になってね?」

紅緒「…………うん、そうだね。私言われたんだ。「紅緒ちゃんは今からまた自分なりの生き方で生きていけば良いんだよ。それが難しいなら手伝うし。」って。だからもう一度自分なりに生きてみようと想う。それを助けてくれる人も私にはこんなにいるんだし……!」

紅蓮・紅葉「!」


そして紅緒兄妹たちはお互いに抱きめしあった。


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紅緒「さて、こういう話はこの辺にしてこの饅頭食べようよ!

紅蓮「そうだな!」

紅葉「食べましょ!」


こうしてまた饅頭を食べ始めた紅緒兄妹たち。


紅緒「あっ、そういえば」

紅葉「ん?どうしたの?」


紅緒は想い出したように、カバンから雨花から貰った雑誌を取り出した。


紅蓮「何だそれ?」

紅緒「私の上司から貰ったの!女子力をつけたいって言ったら用意してくれたんだ!」

紅葉「へぇ。私も見ていい?」

紅緒「もちろん良いよ」


紅緒と紅葉は、ペラペラとページをめくる。


紅緒「色んなこと書いてるなぁ。わぁこの服可愛い!」

紅葉「そうね!紅緒に似合いそう!ほらこの服とか……」


姉妹揃って雑誌をじっくり読んでいく。


紅緒「次は恋愛の質問コーナーだって。」

紅葉「へぇそんなものもあるのね……」


ページをどんどんめくっていく。


紅緒「いやぁ、色んな人がインタビューされてるんだね。ほらこのカップr」

紅葉「ちょっと待って!!!!」

紅緒「うわ、びっくりした。急に大きい声出さないでよ……どうしたの?」

紅葉「この人……いやこいつは……!!!!」


紅葉が釘付けになってるのは、あるカップルのインタビュー写真。そして指さしているのはそのカップルの男。つまり彼氏の方である。


紅緒「この人がどうかしたの?」

紅葉「こ、こいつ、私の彼氏。」

紅緒「えっ!!!!」


それまで黙って寝っ転がってた紅蓮も話に参加した。


紅蓮「えっお前彼氏いたの?」

紅葉「紅緒のことがあったから言わないでいただけ!それよりも……こいつ…………浮気してる……見てみなさいよ!この腹立つこの顔!!何にっこりピースしてんのよ!こんな奴が載ってるこの雑誌も可哀想よ!こんな最低男の話がインタビュー記事に乗ってるなんて……腹立つわね!!!!」

紅蓮「あははははははは!!!!マジうける!何この偶然!そんなこと普通あるのか?そしてこの彼氏も間抜けだな……くっくっくっはははははは!!!!」

紅葉「あんた何笑ってんのよ!!ちょっと今から電話してくる!!」


こうして紅葉は部屋から出て行った。その間紅蓮は腹抱えて大笑いしていた。


紅蓮「この彼氏の顔みてみろよ!彼女とハート作ってめちゃくちゃ爽やかに笑ってる!!記事にも「僕は彼女が初恋で、ずっと彼女だけを一途に想っていた想いが叶って嬉しいです!」だってよ!!あひゃひゃひゃひゃ!!!!何流れるように嘘ついてんだよ!!はははははははは!!!!」

紅緒「ちょっとお兄ちゃん笑いすぎだよ!!お姉ちゃんの前でもう笑っちゃダメだよ?」

紅蓮「あぁはいはい……ぷっふふふふ……」


「(これはお姉ちゃんの前でも笑うな。)」と紅緒は想った。案の定紅葉が部屋に戻ってきて、紅蓮は大笑いをぶちかまし、紅葉は紅蓮に掴みかかろうとしたのを紅緒は必死で止めて、一つ屋根の下、大爆笑してる者。怒りの頂点を超えて暴れ狂っている者。それを必死に食い止めようしている者。兄妹揃っての百面相は夜中続いたのだった。

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