第17話

???「頼みがあって今日はここまで来た。良いか?」


ここは死神組本拠地。そこには「紫雲雨花」「兎白」「瑠璃人」が集まり、雫に頼み事をされていた。


雨花「頼み?」

兎白「何ですか?それ……?」

瑠璃人「雫さんが頼み事なんて珍しいすね」


雫は話を進める。

雫「実は年々弟子の人数が増えてきて、私だけでは完璧に修行に付き合ってあげられていないんだ。だから君たちに修行の先生なって欲しい。一週間限定で。どうだろうか?」

雨花「わたし教えるの得意じゃないんですけど……でもお師匠様の頼みは断れません……。良いですよ」

兎白「俺も雫さんの頼みは聴きたい。参加しよう」

瑠璃人「オレも!オレも!参加したい!!」


こうして「雨花」「兎白」「瑠璃人」は一週間限定で神様見習いの先生をすることになった。


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兎白「なつかしいな。」

瑠璃人「雨花以外の俺たちはもう何年もここに来てないですからね」

雨花「みんなに挨拶しに行こ!」


「なぁ死神組のナンバーワンとナンバーツーがここに来てるんだって……!」「雫さんの元弟子だもんな。どんな力を持ってるんだろう」「死神組めっちゃかっこいいイメージあるよな」「それから「黒い彼岸花」って言われてた奴も来るらしいぞ。」「えっ!噂じゃなかったのか!」「きっとめちゃくちゃ恐いんじゃないか……?」


雫の弟子たちはボソボソと噂話をしていると、雫と共に雨花たちはやってきた。


雫「今日から一週間先生として君たちに修行をつけてくれる神達だ。……さぁ自己紹介を……」

雨花「こんにちは!紫雲雨花です!元々ここで雫さんの弟子として皆さんと同じように修行してました!教えるのはあんまり得意じゃないけど頑張ります!よろしくお願いします!」

兎白「俺は兎白だ。よろしく頼む」

瑠璃人「オレは瑠璃人って言います!この二人の四年下の弟子。つまり弟弟子です!よろしくな!」


こうして自己紹介は終わった。雫の弟子たちは驚いていた。雨花に対して。


「本当にあの人あの「黒い彼岸花」だったのか?」「全くそんな風に思えないな」「全然クールな感じしないし、強くもなさそうだな」「本当にあんな数の妖怪を倒したのか……?」


様々な憶測が飛び交う中、雨花はぼけぇーとしていた。


兎白「結構失礼なこと言われてるのに、雨花は何とも想わないのか?」

雨花「うーん?特に何も感じないけど。寧ろ自分への罰になって良いと想う。」

瑠璃人「お前は相変わらずだなぁ……俺だったらもう怒ってるぜ?」

雨花「はぁ……」


ボソボソと噂話をしている弟子たちに向けて雫はパンパンと手を叩いて静まらせた。


雫「ではこれより修行を開始する。こっちのグループは雨花。こっちは兎白。兎白の手伝いを瑠璃人がやってくれ。では開始!」


こうして修行が始まった。


雨花「じゃあまずは打ち込み台に向けて打ち込んでみて。」


「「「は、はい……」」


まずは単純な打ち込みから始まった。


雨花「なるほど。君は腕を振る時真っ直ぐじゃなく曲がって振ってる。それだと武器がすぐ壊れて闘えなくなる。武器には真っ直ぐ垂直に力を乗せて。そうすれば武器は簡単には壊れないし、対象を綺麗に斬ることが出来る。」


「な、なるほど」とその弟子がメモを取り始める。


雨花「次に君だね。君は相手から攻撃される時、そのまま真っ直ぐ受け止めてる。そうすると必ず力が弱い方が負けてしまう。だから受け流すことを覚えよう。武器を使って、こうして……こうやって……斜めに武器を曲げて……そうすれば相手の攻撃を受け流せる。」


「わ、分かりました」とその弟子もメモを取り始める。しかし、


「けっ、気に入らねぇ。あんな女なんかの言ってることに影響されやがって……」とある弟子に思われていることを雨花は知らなかった。


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瑠璃人「そろそろ休憩にしません?」

兎白「もうか?まだやっても良いんじゃ……」

雨花「わたしや兎白くんは良いとして、このままだとお弟子さんたち潰れそう」


雫の弟子たちは雨花と瑠璃人の意見に大きくうなづいていた。


兎白「そ、そうか。分かった。じゃあ休憩にしよう。」


こうして雨花たちと雫の弟子たちは休憩を取り始めた。


雨花「ふはっ……!」

兎白「ん?何か面白かったか?」

雨花「いやさっきの会話と似たようなこと前にもしたから……笑」

瑠璃人「あぁ、だからデジャブだったんだな。」


三人が会話してると、一人の弟子が声をあげた。


「おい!そこの女!!!!」


雨花「ん?私?」


「そうだ!お前!俺と神通力も妖術を使わずに体だけで俺と勝負しろ!」


雨花「なんで?」


「女が強そうに上から目線に修行してるのが気に食わねぇ!対して強くもないくせにしゃしゃり出んな!女は黙って男の言うこと聞いときゃ良いんだよ!!!!」


雨花「ねぇ、何でお師匠様の弟子ってなんというか血の気の多い人しか弟子にならないの?」

兎白「確かに俺をいじめてたやつとタイプが似てるな。」

瑠璃人「そうなんすか?つか、雨花に勝負を挑むなんて無謀すぎることよくしようとするなぁ」


「話聞いてんのか!?!?おい!!!!」


怒号をあげる弟子そっちのけで雨花たちは話をし始めた。


「(クソ、完全に俺を馬鹿にしている……!)」


「おい女!さっさっと勝負の体勢になれ!!」


雨花「えぇ、本当にやるのぉ??」


「早くしろ!!」


雨花「はぁ……」


仕方なく雨花はその弟子の前に立った。


兎白と瑠璃人はこう想っていた。

兎白「(ていうか神通力と妖術を使わずにって……)」

瑠璃人「(既にその時点で……)」


「「雨花が強いって認めてるようなもんだろ」」


「よし行くぞ!!」


雨花「…………」


弟子が襲いに来ると、雨花は木の幹にそいっと体を移した。弟子も構わず雨花を追っていく。雨花は木々と木々との間を器用に移動していく。


「は、は、は、はぁ…………」


雨花「…………」


「く、クソ何で……お前はそんなに……息切れどころか……汗すら……かいていないんだ……はぁ……」


雨花「…………」


「なんか……なんか言えよ!!!!」


雨花「あなたはどうしてそんなにわたしに勝ちたいの?わたし以外にも相手はいるでしょ?」


「兎白ってやつをいじめてた奴の弟なんだ。俺は。そしてお前が兄貴を倒したから俺の兄貴は正式な神になれなかった!俺の大好きな兄貴に最低なことをしたんだ!お前は!!」


雨花「…………そっか。」


「言っとくが逆恨みなんて言うなよ?そんなことは百も承知だ!でも俺の大好きな兄貴のためにもお前には借りを返さなきゃならねぇ……!」


すると雨花は話し出した。


雨花「あなたのお兄さんは今何してろの?」


「は?それは……今バイトを掛け持ちして、金稼いでる」


雨花「そう。あなたのお兄さんはちゃんと頑張ってるんだね。お兄さんがわたしのことをどう想ってるか。わたしは分からないけどそうやって自分の未来のために一生懸命頑張ってるんだね。良い意味で強かで偉いよ。…………わたしにはそういう生き方は出来なかったから。……あなたはお兄さんが好きなんでしょ?その好きっていう気持ちを大切にしているのはとても良い事だけど、好きなら何をしても良いって訳じゃない。自分の好きの示し方で誰かを傷つけることになるならその示し方は少しずつ変えていった方が良い。」


「は?結局説教かy……((雨花「でも自分の気持ちをそのまんま受け止めて欲しいっていう気持ちも大切にしなきゃだし、そのまんま変えたくないなら無理して変えなくて良いと思う。」


雨花「わたしなんかにはいくらでもあなたの示し方で。あなたの方法で。お兄さんへの好きをぶつけて良いから。今みたいにわたしに勝負を挑んで良いし、言葉を投げたって良い。……でも他の人にはしちゃダメ。もし、あなたが他の方にも同じようなことをしたら、もしかしたらお兄さんが困ることになるかもしれない。……誰しも触れてほしくない過去はある。それを掘り返すことになるかもしれない。だから私だけにぶつけて欲しい。自分の示し方でぶつけたいなら。」


「…………」


しばらく沈黙が続いたが、弟子がこう一言言った。


「お前は、本当に兄貴の言ったようにキモイやつだな」


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兎白「はぁ……結構疲れたな」

瑠璃人「そうすね。もう筋肉痛になりそう……あれ?雨花は?」

兎白「雨花はそこだ」


兎白が指を指したそこには、雨花に襲いかかるあの弟子がいた。


瑠璃人「え!?まだ闘ってんの!?」

兎白「いや、あれを見ろ」


雨花とその弟子の周りに他の弟子たちが真剣にその状態を見てメモを取っていた。


瑠璃人「あれは……?」

兎白「雨花にあまりにもあの弟子が激しく闘いを挑んだ姿をみて、その姿から雨花の戦法を学ぼうということになったみたいだぞ。」

瑠璃人「発想の転換ってやつすね。」

兎白「あの弟子も段々雨花の修行が楽しくなっていったらしい。成績もあの弟子が一番上だったみたいだがもっと向上してるって雨花が言ってたな。」

瑠璃人「まぁ少しでもあの弟子も気持ちが落ち着いたなら良かった」

兎白「そうだな。……」


《…………私にはそういう生き方は出来なかったから。》


兎白「(お前はきっと沢山人を傷つけたんだろうな。でも……もう自分を許しても良いんじゃないか。人を傷つけないと分からない気持ちや気づけないことだってある。そういう気持ちの分かり方や気づき方があった方が良い。その方がもっと他人や自分の気持ちを大切にできる。……そう橙に教えたのはお前だろ?……その考えを自分にも向けたらどうだ?……雨花。)」


兎白の考えは弟子たちの掛け声と共に溶けていき誰にも届くことはなかった。


「透明色の彼岸花」に出てくる打ち込み台は、雫の神通力や妖術を込めて作った特殊な打ち込み台で、打ち込む体勢になると自動的に相手を神通力や妖術、格闘技などを用いて修行相手になり相手の神通力と妖術、そして体術を磨けるという代物。

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