そうして僕は死んだ

はじめに

 多かれ少なかれ、

 早かれ遅かれ、

 僕は結論づけていただろう。


 僕は今迄、臆病でした。

 恐怖と言うモノが、僕のその行為を留まる様にと言い聞かせてくるのです。

 そのモノがあるが故、ある意味人間らしい、否、動物の「生きろ」と言う本能。本能が僕に歯止めをかける。


 その現状が、僕はただ、ただ虚しさを呼び、いつしか虚無になってゆくのです。


 僕が「虚無」を語るのは、大変におこがましいのだが、「虚無」の間、「虚無」で居られる間、僕は決まって記憶を無くし、末路と言うか、終盤と言うのか…もっと先の終わりを体感出来るからです。

 それはとても、僕に「生きている」を感じさせる唯一無二のモノなのです。


 どうしていきたい?

 どうされたい?

 どうしたら、君に幸が生まれて来るのか?


 愚弄な質問は止めて欲しい。

「無」こそ、「虚無」こそ、「記憶が無い」こそが僕の「幸」なのです。

 この世のどれにも勝る、僕が感じる、僕の全てをかけられた、「美しい」モノなのです。

 満天の星空より、夕焼けより、朝日を指す太陽の光より「美しい」のです。


 以前に、比べてみた事があった。

 大量のテトラポットをかいくぐり、海水が目前の所まで到達した時、僕は何故か空を見たのです。

 その時、深夜でした。

 夜なのに、何か眩しかったので、僕は空を見上げたと思います。

 テトラポットをかいくぐっている間は、暗闇の中、足を踏み外さない様に、我がの足ばかりに気を取られていたので、気付かなかったのだろうと思います。

 我がの足ばかりに気を取られるなんて、僕はまだ未練があるのだろうと、今思い返せばそうなのです。

 何とも情けない自分にまた、ふっと落ち込むのです。

 情けない、その不快さを例えるのなら、水を頭にかけられて、ぽたぽたっと服の上に水滴が落ち、それが浸透して肌へ到達した不愉快さ。

 洗濯したは良いが、冬の生乾きで着なければいけないシャツの冷たさを感じた時の…と言えばわかりやすいだろうかと思います。



 僕は僕なりの激動の人生とやらを過ごした、その結末をこれからお話ししたいと思います。

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そうして僕は死んだ @moro_jkp

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