入浴剤は

藤木美佐衛

入浴剤は

入浴剤をお風呂に入れると

お湯が濁って

そこにナニかいても見えないから

入浴剤は入れたくない


入れたくないのに

今夜は

先に入った家族が

勝手に入浴剤を入れたので

お湯が白く濁っている



あゝ

嫌だ

嫌だ

嫌だ

何かの映画であったじゃん


お湯の中から

股の間から

髪の長い女が出てくるのよ

まっ黒い長い髪が

お湯の表面いっぱいに広がるのよ


嫌だ

嫌だ

嫌だ


股は閉じておかなきゃ

出てこれないように



股を閉じて

足をグッと伸ばすと

浴槽の向こうの端に突き当たる







ぐにゃりとした柔らかい浴槽に突き当たる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

入浴剤は 藤木美佐衛 @nyakosense

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る