合戦場いろいろ
リョウが初めて参陣した二〇代の頃は、合戦場はとても賑わっていた。やはり物珍しさもあったのだろう。しかし、次第に人が減っていった。もっとも、過疎にまではならなかった。
多分、好みが別れたのだと思う。
特に対人戦を好まない人や、自分が死ぬのが嫌な人に合戦は向かないだろう。
リナも合戦が嫌いだった。
その理由を尋ねたところ、「合戦場の雰囲気が好きじゃない」と言っていた。何かトラウマになる出来事があったのかもしれないが、分からない。
ちなみに、確か対人戦に限っては装備が傷まない仕組みだった。その意味ではデメリットはなかったのだが。
考えてみると、「そもそも合戦場では何をしたら良いか分からない」という人もいたかもしれない。雑魚狩りパーティなどはフィールドの狩りとあまり変わらないが(ただし対人パーティに襲われるリスクはある)、それ以外は通常とはかなり違う。
花形はなんといっても武将パーティだが、誰でも行けるかというとそうでもない。防衛する敵「もののふ」がいればサポート(例の囮や露払い)を頼む必要があり、またどこを攻めるかなど味方同士の調整も必要だった。当然、失敗した場合の徒労感も大きかった。
いつも勧誘待ちをしているような奥ゆかしい人は、なかなかパーティに入れず、チャンスが回ってこないだろう。
それで、誰でも行けるゲリラが流行りだしたのかもしれない。
ちなみに、合戦に限っては、リョウはあまりものぐさではなかった‥‥‥ずうずうしくパーティに入れてもらったり、自分でパーティを作ったりした。
やはりそういう人間が、合戦場でもチャンスは多かったと思われる。あるいは進んで露払いや囮をやる人も。
(とはいえ、サポートで走るのは誰かの別な分身〔いわゆる別アカ〕が多かった)
合戦を敬遠する人の中には、常連が「大きな顔」をしているのが嫌だという人もいたかもしれない。
確かに常連が仕切っている面はあったと思う。が、そこは勝負事なので勝たないとダメなのである(負けていては、最悪の場合勢力が滅亡してしまう)。特に兵力が拮抗している場合は作戦も重要で、ある程度調整しないといけなかった。従って仕切りも必要だった。
まあ、譲り合いや奉仕の精神と自己主張を、適宜使い分けるという感じだったと思う。
ただ、あちこちの合戦を見た経験から言うと、仕切ると言っても「次、〇〇行けるパーティある~?」とか「△△行くのでサポートよろ(しく)~」とかそんなレベルだった。ましてや命令などはなかったと思う。
とはいえ、どういう事情か分からないが、反発してやり合うような場面も目撃した気がする。これはまあ、ある程度は仕方がないと思うが‥‥‥
いずれにせよ合戦場の人間模様はいろいろあって興味深かった。
ただ一つ確かなのは、リョウのような脳筋薬師でも活躍できるところが良かったのだと思う。
最後にこっそり白状しておくと、合戦自体の勝敗はどうでもよかった。負けが込めば国・勢力が滅亡するが、リョウのいる勢力はそれもなかった。
滅亡のリスクが大きいのは、やはり人数の少ない国だった。
人数が少なくて押されているときは、街に出て
「押されてま~す。合戦場に来られる方はいませんか~」
などと叫んだこともなつかしい。
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