第10話 『攻撃魔法再現魔具』
〔王国歴377年
俺たち3人は領主館から帰ると、遅めの朝食を摂った。
討伐に出る時にいつも摂る、消化が早い食べ物ばかりだ。
普通の討伐士はその辺りは何も考えていないが、俺は異世界の知識で食べる物を選んでいる。
食べ物によっては消化に時間差が有ったり、ガスが溜まるなんてこちらでは誰も考えない。
だが、異世界では命のやり取りはしないが、スポーツという身体をフルに使った運動が盛んだった。
自然と食物と運動の関係も研究されていたので、それを参考にしている。
ほんと、こういう知識だけでも一般的な討伐士に比べて圧倒的な優位を得られる。
「さあて、忘れ物は無いな? 各自装備確認。良し。では、行こう」
討伐に出る際の装備状態相互確認は俺が口うるさく言って、習慣化した。
日常から討伐へ意識を切り替える為も有るし、うっかりミスを無くす為でも有る。
これも異世界のスポーツでいう「ルーティン」を参考にしている。
俺たち3人は、色々試した結果、装備品を一部統一している。
異世界で言うバスタードソードを近接戦用にして、魔法攻撃用に近距離・中距離・遠距離と3種の俺謹製の発動魔具を装備している。
アルマもエッサも、多少の剣術系スキルの優劣は有るが元は2人とも剣主体で戦っていた。
魔法は、警戒心の強い等級の低い小型の獣や魔獣に不意打ちが可能な時にだけ中距離先制攻撃用としか使っていなかった。
まあ、剣重視のほぼ近接型という感じだな。
それで討伐士7級まで昇格したんだから、そのまま行けばどっちにしろ6級までは行けただろう。
そう、堅実に儲けて、暮らして、蓄えを作る分には、それでも問題は無かった。
だが、本人たちはもっと上を目指したがっていた。
だから、焦って無茶して、討伐失敗どころか魔獣の反撃で大怪我をしそうになって撤退している最中に、偶々別の魔獣を追い掛けていた俺に助けられた時に、新しい世界の扉が開いた気がしたんだと。
で、剣の腕前の上昇はこれ以上は無理だろうから、魔法の実力を上げるって話になったんだが、普通はそんな事は困難だ。
使い捨ての攻撃魔法用の魔具は売っているが、そんなのを普段使いすれば当然だが収益は出ない。
一種、最後の隠し玉的な使い方が一般的だな。
そこで、俺の異世界知識の登場だ。
再利用が可能で、そこそこの威力の魔法が使えれば、戦術の幅が広がる。
で、造り出したのが『近距離用突風魔具』、『中距離用火炎魔具』、『遠距離用石弾魔具』の3つだ。
風系の魔法は下級では威力が弱くて、意外と使い勝手が悪い(上級になると範囲攻撃が可能になって「使える魔法」も増えるんだが)。
そして『近距離用突風魔具』は、前方に有効射程5㍍ほどの衝撃波を放射する風系の中級魔法を、有効範囲と射程を絞り(範囲を20度に、射程を2㍍に絞り)、使用魔力を下級魔法並みの省エネに改良して再現している。
魔具自体は、男女差によって形状は違うが、3人とも共通する意匠の胸甲部分に飾りの一部としてさりげなく取り付けている。
まあ、知らなければ魔具とは気付かれまい。
『近距離用突風魔具』の利点はバスタードソードを両手で持っていても発動出来る点だ。
魔具の効果は、見えないジャブだと思えば分かり易い。
まあ、所詮は空気を圧縮して放出するだけなので殺傷力は低いが、バスタードソードの一撃に繋げる様に使えばボクシングのワンツーと同じ効果が得られる。
突風で相手の守りや意識を崩して、バスタードソードで深くダメージを与えるという感じだ。
相手の出鼻を挫く牽制用としても使えるのも良い。
使用魔力も少なく、予備動作も詠唱も不要だから意外と使い勝手が良くて、良い魔具を造り出したと自画自賛したいくらいだ。
『中距離用火炎魔具』は、有れば便利な魔具と言える。形状は20㌢くらいの棒状だ。
元々、火系の魔法も下級では攻撃用としては弱いし、素材を駄目にする危険性が高いので使い難い。
まあ、中級からは火炎瓶相当の威力が出るから使いどころは有るんだがな。
で、『中距離用火炎魔具』は正に火炎瓶相当の火力だ。射程距離も50㍍は飛ぶ。
中距離で小型の獣の群れの数を削りたい時や群れを誘導したい時、大型の魔獣を牽制したい時に使う事が多い。
最後の『遠距離石弾魔具』は最大射程600㍍以上、有効射程300㍍ほどで、片手で握れるくらいの石を時速200㌔という高速で投擲出来る魔法を新規に開発して、それを魔具化したものだ。
最初は石の礫を魔法で生み出して銃の様に打ち出す魔法を開発したかったのだが、2人の魔力では1発も撃てない事が分かって開発を諦めた経緯が有る。
ただ、この魔具はそれからもかなり開発に手間取った。
何故なら、それまで従属属性として扱っていた運動属性(もしくはエネルギー属性と言うべきか)を1から魔法に体系化する作業に他ならなかったからだ。
途中で『いっそ、ただの
魔具の形状は
そう、この魔具は、数を揃えれば恐るべき範囲魔法として使えるのだ。
念の為に使用者を固定する術式迄開発して組み込んだのは今では良い思い出だ。
2024-12-07公開
お読み頂き、誠に有難う御座います。
第11話の投稿予定は未定です。
第11話はまだ1文字も書いていませんから(;^ω^)
あ、タイトルだけ決まっていました(^^)/
『
これからも週に2話程度の頻度で(休みごとに書き上げて)投稿する予定です(評価が芳しくなければ頻度が落ちますのでご理解とご協力を賜わります様に伏してお願い申し上げ候)。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます