凍てつく大地の秘宝
鳥位名久礼
序:雪の進軍
『凍てつく大地の秘宝』
セッション日:2024年10月22日~
LINEにて(リレー小説形式による)
◆主な登場人物
*パンドラ:炎のように赤く豊かなウェーブ髪が特徴の34歳の女。鍛え抜かれた体軀の繰り出す情熱的な舞踏と弦楽が得意な
*カテナ:紺色のツンツン髪と毛皮衣のみを身に着けた野性的な姿が特徴の推定10歳男児。獣人(狼男)と人間の子で、狼に変身できる半獣人だが、普段は至って無邪気な子供(但し人間不信)。度し難い野性味と人間社会への無知ゆえに突飛な行動も多いが、血気盛んな男児らしい純情で突っ走る愛されトリックスター。
*ドルジ:仙人のように白く長い鬚と眉毛が特徴の110歳の老人。眉毛で目が隠れている。雪の大山脈に囲まれた東方の辺境「カワチェン」出身の
*クルト:焦茶の長い直髪が特徴の12歳の少女。
*アイシャ:紺色のウェーブ髪が特徴の19歳の娘。魔法学院に通う
*アイグル:長い濃紺がかった黒髪が特徴の22歳の女。今作の舞台である北国ルーシ帝国の辺境森林地帯に居住する少数民族出身の
◇キャスト:
パンドラ&ゲームマスター:AKIRA
カテナ:
ドルジ&クルト&アイグル(&リュリコフ):鳥位名久礼
アイシャ:ま
「さむーーーーい!」
ブリザードの凍てつく雪と風が吹きすさぶ平原を、五人の男女が歩いてゆく。
「さむいさむい、しんじゃう!」
10歳前後くらいだろうか。フードを深々と被った少年が列の最後尾を行く。時折風に吹かれて、フードの隙間から口元の鋭い犬歯と、紺色の髪、寒さに震えながらも狼のような気高き瞳が見え隠れする。名をカテナ。人間をはるかに凌駕する半獣人(狼男)の少年だ。
「ほっほっほっ、わしの故郷“カワチェン(東方の辺境の国)”の冬はもちっと寒いぞい」
カテナの前を杖をついて歩くのは、白く長い眉毛と鬚を蓄えた100歳を超える老賢者ドルジである。眉毛にすっかり覆われて隠れてはいるが、楽しそうに目元が笑っているようだ。
「でも、たしかに寒すぎだよ……」
「クルト、こっちへおいで!」
ドルジの前にいるのは二人の少女。
一人はカテナの少し年長くらいだろうか。
そんなクルトを雪と風から守るために、成人を迎えた頃であろう美しい紺色のウェーブの髪をなびかせた女性が、自身の羽織るマントでクルトを覆った。彼女の名前はアイシャ。うら若くしてプラーク魔法学院の修士課程に特進入学した秀才魔術師で、交易商人の家という出自もあって多言語に精通する聡明な学者でもある。
「パンドラーー! ほんとにこんなところにおさけあるのー!!?」
カテナの声が雪風にかき消されそうになりながらも、先頭を歩くパンドラという女性に届く。
雪でも白く染まらない炎のように赤い髪を持つ踊り子、パンドラ。その赤い髪と情熱的な踊りから“炎の竜姫”と呼ばれている。年齢は30過ぎ(これはタブー)で、チームの姉御的存在である。
「大丈夫よカテナ! マイナス50度の世界でも凍らず、味も落ちないという幻のワインがあるなんてロマンしかないわ! 楽しみでしょ♪」
北国出身の人間でも音を上げそうな寒さの中で、パンドラは笑みを浮かべて言った。
「ロマンじゃないよ! オイラはおさけのめないしー!」
「ほっほっほっ♪」
愚痴をこぼすカテナとパンドラのやりとりにつられて笑うドルジ。
「一般的なワイン(度数12)の凝固点はマイナス15度前後、たしかに幻のワインですね」
アイシャも
「パンドラのおねがいじゃなかったらこんなトコ…… あ゙っ……ふぇっ……ふぇっっぷし!! がゔゔぅ……こんなメチャクチャじゃ、オイラのハナもやくにたたないよ…… 」
先行く仲間達が雪踏みしてくれた跡に沿うも、極寒の環境とヤル気の低さが重なり、その足取りは重い。自慢の鼻を摩った時に付着した固形物に気付いた少年は、さらにげんなりとした表情をする。
「あ゙っ…… オイラのはなみず、もうこおって……! ゔぅ、クルトだけズルい! オイラはじーちゃんのなかに はいらさせて!」
「冷え性ねぇカテナ。もっと食べて筋肉つけなきゃ」
「キンニクつけたってさむいよ! レオだってこのさむさには たえられないよ!」
「……れお?」
「どちらさんじゃ?」
きょとんとするパンドラとドルジ。
「ん? オイラなんかいった?」
カテナは自分の発言を忘れていた。というより言った意味さえ理解していない。
「レオ?(何処かで聞いたことのあるような……)」
「ん……?(なんかどこかで……)」
アイシャとクルトは同じタイミングで首を傾げた。
カテナはそんなことは気にせず、そそくさとドルジのコートの中に入り込んだ。
「この国が他国に攻め込まれたのが約100年前、他国の兵士の七割は戦闘自体ではなく、この過酷な冬の自然にやられてしまったようで。確かに前情報なしでは死ねる寒さですね」
「さすが、よく知っているわねアイシャ! これから向かう町もその戦時中に発見されたのよ」
「“
アイシャの知識に感心するパンドラの傍らで、やれやれといった感じで皮肉めいて肩を縦に揺らし呟くドルジ。
「この地域では生のお肉を食べる習慣があるそうだよ」
クルトはアイシャのコートからひょっこりと顔を出し、カテナを見つめながら言った。
「えっと……オイラみたいに、にくをそのままたべるほうがおおいニンゲンたちってこと? なんかめずらしーよね? でも、まちかぁ……。まちのそとからあんまりヒトがこないところって、たびびとは……とくにオイラたちみたいにおとなのわかいオスがいないと おそわれやすいってゆーし……。わるいニンゲンもいそうでヤダなぁ……」
クルトと同様、カテナもドルジのコートから顔だけ出して応え、あたかも首同士が会話しているような光景が出来上がっている。
「ここらの地域は野菜が育たないから、新鮮な生肉と内臓と血が栄養になるのさ。まぁ私は生肉も生魚も苦手だけどね」
パンドラは振り向いて、首だけが見えているカテナに笑顔を向けた。
「町の収入源が地下資源と若干の観光業ですから、人の出入りは限られていそうですね。多少警戒はされそうですが、辺境地なのでマナーさえ守れば大丈夫でしょう。それに今は
コートから首だけ出しているクルトのほほを撫でながらアイシャは語る。
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