いーとあんどらぶど!

粘性サメ

1.異世界に来てやることそのいち

異世界転生して最初にするべきことは?

教えてあげよう、環境改善だ。

というわけで異世界へとTS転生してから10年経った私は今、馬車の中にいる。正確には荷馬車だけど。


「クロエ姉……行かないでよぉ……。」

「そうだよ!俺達と一緒にいてよ!」

「ごめんなさい、私は行かなきゃいけないんです。どうか分かってくださいね。」


荷馬車の隙間から見えるは別れを惜しむたくさんの孤児と囲まれているこの教会のシスター、クロエ。

今から教会から旅立つクロエの荷馬車に、私は忍び込んでいるというわけだ。

忍び込んでいるとは言ったが、別にクロエを勝手に利用しているわけではない。むしろ私が荷馬車に忍び込むのはクロエの提案だ。


「それではお願いします。」

「いいんですかい?まだあんたとたくさん話したいって感じですが……。」

「いいんです。あの子達はまた新しいシスターと共に元気に生きると思いますから。」

「そうですか。それじゃあ行くとしますか。できるだけ気をつけはしますが、揺れには気をつけてください。」


そう言って御者は馬を走らせ始めた。

荷馬車の小さな穴からどんどん教会が小さくなっていくのが見える。そうして、ついに教会が見えなくなった。


「さてと……これくらい走れば見えないと思いますぜ、クロエさん。」

「えぇ、ありがとうございます。ベイリー、出てきてもいいですよ。」


そう名前を呼ばれ、荷馬車の中から出る。

ベイリー、それがクロエに考えてもらったこの世界での私の名だ。


「お尻は痛くないですか?ベイリー。」

「尻尾を敷いてたから大丈夫だよ。」


尻尾。そう、私には尻尾がある。私とクロエがあの教会を出る原因となった尻尾が。


「ベイリーの嬢ちゃんが乗り込んだことですし、また出発しますかい?」

「はい、お願いします。」

「あいよ。……そういえば、なんで嬢ちゃんはあの教会から出たんですかい?あぁいや、その尻尾が理由とは聞きましたし、言いたくないなら言わなくてもいいんですけども。」

「クロエがいいならいいよ。」


そう言ってクロエの方をちらっと見ると小さく頷き、話し始めた。


まず始めに、私はクロエに拾われた。私はその時の記憶がないが、クロエ曰く「花畑の中で眠っていた。」とのこと。ベイリー3歳、花畑で爆睡。

そうしてクロエは眠っていた私を教会に連れて帰った。と同時に私の意識も始まった。

なぜか知らない場所にいた私は3歳の体であることもあって大泣きした。大泣きしたし、クロエはそんな大泣きする私を見て大慌てした。そして大慌てするクロエを見て私は冷静になり、今の状況を理解した。

これ異世界転生だ。

そうして状況を理解した後、冷静になったクロエが私に「一緒にこの教会で暮らしませんか?」と提案した。帰る場所どころか住む場所もない私はすぐに頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る