家を追い出されたのでSSS級ダンジョンに住むことにしました

田中又雄

第1話 新しい我が家

「...押村さん...。もう3か月分も溜まってるんだけど?本当に払う気あるの?」と、玄関を開けると大家さんが呆れた様子で俺に問いかける。


 寝起きということもあり、あまり脳が働いてなかった俺は...「ぁぁ...はい...払いますよー...うん...」と、適当に返事をする。


「これが最後通告だから。次遅れたら追い出すから」

「...へーい」


 少し前にネットで見たことがある。

確か大家が居住者を追い出すにはいろいろと面倒なことがあると。

このボロアパートを経営している大家がそんな面倒なことまでして、俺を追い出すわけがないと高を括ってそのまま二度寝をした。


 それから1か月後...。


 ダンジョン冒険者免許更新のために事務局に行き、面倒な講習を終え、財布に残ったわずかなお金でソフトクリームを購入する。

あぁ...そろそろまじでダンジョン攻略しないとやばいかな...。


 なんて思いながら我が家に帰宅すると...ありとあらゆる家具や家電、それ以外の家のものがすべて外に出されており、家の扉には『家賃滞納男!』と書かれた紙が書かれていた。


「...あのBBA」


 俺が悪いことはわかっている。いや、世間が悪いのかも。

そんな風に言い訳しながら、外に出されたものを家に戻そうと鍵を回すも...。


「...え?開かないんだが」


 どうやらマジで追い出されたらしい。


 ようやく危機感を覚えた俺は急いで不動産に行き、即入居可の物件を紹介してもらうものの、即入居といえど即日入居にはならず、数日時間がかかり、その間に家電は大雨の影響で全部壊れ、家具も使い物にはならなくなった。


 そのせいでわずかに残ったお金でネカフェ暮らし...。

さらに、不動産の審査も通らず新しい家も決まらない。


 そんな状況でさえ、俺のやる気スイッチは入ってくれかった。

とはいえ、本当にお金はない...。


 あーぁ...やばい...まじでやばい...。


 その瞬間、天啓がひらめく。


 そうだ...ダンジョンに住めばええやん。最近はダンジョン飯も流行ってるし、上の改装に行けば行くほど、旨いモンスターがいるらしいし、ダンジョン内も豪邸の内装のように豪華になっているとか...。


 そうだそうだ。ダンジョンボスをちゃちゃっと倒して、そのまま報告をしなければいいだけのことだ。なーんだ、簡単じゃん!


 じゃあ、どのダンジョンに行こうかな...。討伐報告をしないってことは、ほかのやつが入ってくる可能性もあるわけで...てことは上のダンジョンに行けば行くほど見つかる可能性も低いってことだ!


 よし!決めた!SSS級ダンジョンに住もう!


 久しぶりにやる気の出た俺はネカフェのシャワーを浴び終わると、すぐにダンジョン事務局に向かった。



 ◇


 さて、到着した。

ちなみに、俺は以前、腕試しで入った人類最高到達点であるSS級ダンジョンを単独でクリアした経験がある。

もちろん、それが俺だということはみんな知らない。

あくまで、モンスターを討伐しただけで放置していたら、いつの間にかすごい騒ぎになっていた。


 その時使った手法で今回もSSS級ダンジョンに忍び込もうとしていた。


 俺のダンジョンランクは【E】。

馬鹿正直に『SSS級ダンジョンに入りたいんですけど!』なんて言っても通してもらえるわけがない。


 前回同様、受付の時にバレない様に魔法を使って小細工をするしかない。


「あのーすみませんー。ダンジョン受注お願いします~」というと、おばちゃんが出てきて、「何ランク?」と怪訝そうな顔でそう言われた。


「えっと...」と、免許証を出そうとしたところで催眠系の無詠唱魔法をおばさんにかける。


「...SSS級ダンジョンに入りたいんですけど」

「...はい。SSS級ね...」

「それと、俺が入ったいう証拠もログも全部削除しておいてね」

「...はい」


 そうして、こっそりとゲートに向かい、俺はSSS級ダンジョンに入ることに成功したのだ。


 ダンジョンの中に入ると、その内装の綺麗さに驚く。


 SS級も相当だったが...これはもうダンジョンっていうか普通に豪邸だな。


 すると、侵入者に気づいたモンスター達が一斉に襲い掛かってくる。


「あーはいはい、どけてくださいねー」と、ごみを払うようにモンスターを倒していく。


 そうして、1時間ほどかけて幹部やなんやらを全部倒して、最後のボスらしき部屋に到着する。


 扉を開くと、そこには何ともいい部屋が広がっていた。

冷蔵庫らしきものに、キッチンに、ベッドに、ソファと机...。


「まじでここなら住めるじゃんか」と、部屋を見渡していると...。


「あんたが侵入者?てか、何その軽装...。てか...なんでキャリーバックを持ってるのよ」と、悪魔の見た目をしたかわいらしい女の子がパンツが見えそうな感じで足を組み、見下ろしながら俺に言った。


「今日からここが俺の家だ!」と、宣告するも「...馬鹿なの?」と一蹴される。


「けど、油断はしないわ。幹部どもを倒して無傷ってことは相当な強さってことでしょうからね。さて...」と、立ち上がった瞬間、風魔法でスカート的なのを捲し上げる。


「なあっ!?//」と、赤面する女の子。


「意外!まさかのくまちゃん白パンツ!」と叫ぶと、四方八方から銀の槍が飛んでくる。


「うぉ!さすがはSSS級!強い!」と、あっさりとそれを躱して彼女に接近する。


「く、来るな変態!!//」と、ご褒美的なものを浴びながら攻撃をかわし、目の前に来たところで精神魔法を使おうとした瞬間、伸ばした手が彼女の胸のぽっちにあたる。


「あっ」

「...ば、ばかぁあ!!!変態!!!消えろーーー!!!//」と、大暴れする。


「今のはラッキースケベだから!」と、弁明するも「もうお嫁にいけない!!//」と、純情乙女な発言をする悪魔ちゃん。


 そして、すべての攻撃を躱すと、彼女は不貞腐れたようにベッドに沈む。


「もうあんた帰れよ!」

「いや...帰る場所がないからここに来たわけで...」

「...帰る場所がない?」

「そう。ダンジョンに住むために来たんだよ」


 すると、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で驚く。


「な、なにそれ!?//じゃあ、私と一緒に住むために来たってこと!?//プロポーズってこと!?//馬鹿じゃん!//で、でも強い男は好きっていうか...えへへ...」と、一人でぶつぶつつぶやき始めた。


 なので、彼女を放置してキャリーバックからさっき倒したモンスターを取り出し、勝手にキッチンで料理を始める。


「ちょ!何勝手にキッチン使ってんのよ!」

「え?いいじゃん。別に今使ってないんだから」

「そういう問題じゃ...。...いや...もういいわ。わかったわ...好きにしなさい...」


 こうして俺は無事に新たな住処をゲットするのだった。

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