第2章: 思いがけない出会い



5年後…


それは東京の、他の日と変わらない日だった。日本で最も発展した都市。高層ビルが立ち並び、ネオンに彩られた通りを人々が行き交う中、未来的な都市の日常が営まれていた。しかし、その近代的な表面の下には、ある真実が隠されていた。一般の人々は、自らの街であるはずの東京で、すでに脇役へと追いやられていたのだ。Zenkō Technologiesの技術によって生み出されたサイボーグや超越者たちの力に支配されて。


そんな混沌の中、とある暗い裏路地で、銃声と叫び声が響いていた。


「止めろ! 彼を逃がさないでください!」




弾丸と赤い光が飛び交う中、一人の人物が巧みにそれらをかわしながら動き回っていた。彼はまるで重力を無視しているかのように、弾丸の間をすり抜け、驚異的な動きで攻撃をかわしていた。


危険の源の前に立つのは、制服を着た一人の女子生徒。控えめな外見と怯えた表情を見せ、彼女は16歳ほどに見える少年の後ろに隠れていた。彼女は生徒会長であり、彼女を守っていたのは、何事もなく立ちはだかるZeroだった。


「どうして…どうしてこんなことになったの?」彼女は考えながら、目の前の彼の後ろにしゃがみ、飛び交う弾丸の熱を感じながら顔を覆っていた。


東京特別警備隊のサイボーグ隊員たちは、Zeroを止めようと正確に狙いを定めていたが、その努力はすべて無駄だった。彼はただそこに立ち、すべての攻撃を自分の身体で防ぎ、笑みを浮かべながら彼らに返していた。彼は楽しんでいるようにさえ見えた。


生徒会長は恐怖と困惑の間で、どうしてこの普通の見た目の少年がこれほどの攻撃を防げるのかを不思議に思っていた。それに加え、ただ好きな男子と一緒に平穏なデートがしたかっただけなのに、どうしてこんなことに…。


Zeroは視線を敵からそらさずに、軽く彼女の方に振り向き、無邪気な笑顔で言った。


「覚えてないの?」彼は軽く、楽しそうに続けた。「これ全部、君がデートって何か教えたかったから始まったんだよ。」


彼女は目を閉じて、すべてが始まったときを思い出した…



---


回想 - 3日前


夕日の光が教室の窓から差し込み、生徒会長の赤音の顔を照らしていた。彼女は立ったまま完璧な姿勢を保ち、影が長く伸びるのを見つめていた。その影は、彼女が背負っている責任の重さを映し出しているかのようだった。


赤音は、学校の誰もが憧れる存在だった。責任感があり、効率的で、少し距離を置いたような雰囲気。彼女はその学年のトップの成績を誇り、完璧な生徒会長として誰にも近づきがたい存在だった。つまり、みんなの憧れ…そして、ひそかに多くの男子生徒にとっての理想の相手。


しかし、今その落ち着いたイメージは揺らいでいた。彼女は誰も予想していなかった相手、転校してきたばかりの1年生、Zeroに告白する勇気を奮い立たせて、廊下の端で立っていた。


彼は今まで彼女が出会った誰とも違っていた。彼が来てから、Zeroは独特の方法で彼女の関心を引いていた。彼は学校のルールにも、周りからの賞賛や侮蔑の視線にも無関心のようだった。いつも子供っぽいエネルギーと無邪気な楽しさを持っていて、彼女を強く惹きつけた。なぜか、彼の姿を見るたびに、赤音の胸の奥がくすぐられるような感覚に襲われた。


足音が彼女の思考を中断させた。廊下の端に、Zeroがポケットに手を入れて、無邪気な笑顔で現れた。緊張に支配されている赤音の様子などまるで気にせず。


「赤音先輩!」彼はいつもの軽い調子で言った。「呼んでくれたけど、何かあったの?」


赤音は頬を赤らめ、一瞬自分の行動に迷った。心臓は早鐘を打っていたが、彼女は平静を保たなければならなかった。そう、生徒会長として、たかが1年生の男の子に緊張するわけにはいかない…はずだった。


「ちょっと…君と重要な話がしたいの」彼女は震えを隠そうとしながら答えた。


Zeroは好奇心いっぱいに彼女を見つめ、その意図をまったく理解していないようだった。


「重要な話?」彼は首をかしげ、純粋な無邪気さを漂わせた。


彼の反応に赤音は少し笑ってしまった。彼はまるで子供のようで、その無垢な感じが彼女に一種の親しみを感じさせた。


「私と…」彼女は言葉を詰まらせ、手の震えを感じながら続けた。「私と一緒に出かけてほしいの。つまり、デートって意味で!」


その言葉を発した瞬間、赤音は地面が崩れるような感覚に包まれた。勇気を振り絞った言葉だったが、羞恥心で顔が真っ赤になっていた。彼はどう思うだろう?どんな反応をするのか?


彼女の予想とは裏腹に、Zeroは驚く様子を見せなかった。むしろ、彼はまるで世界で一番面白い話を聞いたかのように興味津々に見えた。


「デート?それって何?」彼は純粋な表情で尋ねた。


赤音は驚きに目を見開いた。Zeroは…デートが何かも知らなかったのか?状況は奇妙だったが、その素直な好奇心に彼女は少し微笑んだ。彼に簡単に説明すると、Zeroはその考えに心から喜んでいるように見えた。


「じゃあ行こう!」彼は嬉しそうに言った。「君がしたいなら、喜んで付き合うよ!」



---


回想終わり


こうしてすべてが始まった。生徒会長であり、真面目で尊敬される少女は、未知の感情に身を任せ、自分でも思わぬ方向へ進んでいた。


現在に戻り、赤音はZeroが特別警備隊のサイボーグたちの攻撃を次々と防いでいる様子を見ていた。彼はまったく恐れることなく、むしろ…楽しんでいるようだった。


「赤音先輩」とZeroは敵から目を離さずに言った。「このデート、思ってたよりずっと面白いね。」


赤音は笑うべきか、泣くべきか、それともただ震えているべきか分からなかった。本当は静かなデート、たとえば散歩や会話を楽しみたかっただけだったのに…こんなことになるなんて、想像もしていなかった。


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