第5話 初めてのパーティ

「あ、あの……良かったら一緒に……行きませんか?」


 勇気を振り絞って黒崎さんにダンジョンへ同行する旨を提案してみた。もっと彼を知りたい……その一心で、陰キャの私は今までした事無いようなお誘いをするのだった。


「一緒に?いいぜ」


 返事早っ!少しは考えて!?


 まさかの二つ返事に誘った私の方が驚愕してしまう。


〈おおおおお!〉

〈コラボ配信きちゃ!〉

〈いいぞ〜!〉


 コメントも大盛り上がり。というか同接やば!3万人来てる!?


 いつの間にか増えた視聴者の多さにも驚いてしまう。こんな事初めて……やっぱり緊張してきた!お腹痛い!


「どした?早く行こうぜ」

「あっ!はい!行きます……!あ、みんな。一緒に行く事になったから……よろしく」


〈はーい!〉

〈寧ろありがとう〉

〈これは見逃せない!〉


 一応遠慮がちに報告するが、相変わらずみんなは大歓迎の様子。そうして黒崎さんに促されてダンジョンへ向かうのだった。


「じゃあ、パーティを組みますね」


 魔力体の機能である空中に浮かぶウインドウを操作する。

 

「お、『パーティ申請』。これを押せばいいのか?」

「そうです。『はい』を押すとパーティに入って、地図の同期とかができて便利です」

「なるほど……」

 

 マップに黒崎さんの位置を示す三角のマークが見える。無事にパーティに入れたようだ。


「あ、ダンジョン入る前に確認したいんですけど……」

「なんだ?ゆい……あ、ゆいでいいか?」

「は、はい!なんでも大丈夫です!えと!持ち物とか、スキルセットとか立ち回りとか……攻略前に確認するんです」

「なるほど。しっかりしてるんだな」

「い、いえ……!他の人もパーティ組むとそうしてるって聞いてたから……」


 流れるように名前呼びされたり褒められてちょっぴり嬉しくなる。頬はさっきから熱を持ちっぱなしだ。


〈照れてる〉

〈可愛い〉

〈うーん乙女〉


「て、照れてないよ!」


 コメントに茶化されて普段無口無愛想な私も思わず声が大きくなる。


〈またまた〜〉

〈わかりやすいタイプなのね〉

〈kawaii〉


「う、うるさい……!黙って!」


〈……〉

〈……〉

〈……〉


「やっぱ喋って!」


〈草〉

〈草〉

〈どっちだw〉

〈面白い子w〉


「ははは!仲良しだな〜」


 私とコメントの漫才みたいなやり取りで黒崎さんが笑う。ちょっと恥ずかしいけど……嬉しいな。笑うと眉間の皺が柔らかくなって可愛らしさがある。ギャップ萌えだ。


「んで、持ち物とかの確認だったな」

「あ、はい。そうでした……」


 そんなこんなでやっと本題に入るのだった。


 先ずは持ち物だ。インベントリを開き確認する。


 私はポーション2本、浮遊型ライト1つ。後はお金と携帯食料。


 黒崎さんはポーション3本、浮遊型ライト1つとお金に携帯食料でほぼ変わらない。


「2層は比較的初級のダンジョンなのでこれぐらいで大丈夫ですね。ポーションとかも敵を倒すと落ちたりしますし」

「なるほどな。じゃあ次、スキルセットだっけ?俺知らないんだよな」


 そうだった。初心者だもんね。


「スキルセットは1人につき最大7つまで装備できる武器とか能力です。インベントリの自分の姿をタッチすると出ますよ」


 彼が言った通りに操作すると、6つの空白の欄が現れた。


「おお、これか」

「はい。そこはスキルパレットって言って、スキルストーンと呼ばれる色んな力を発動できるアイテムをセットできるんです」

「なるほど……?」


 イマイチよく分かってないようだ。分かる。私も説明だけじゃ分かんない事多いし。


 だからやって見せることにした。


「ちょっと待ってくださいね」


 私は視線の先に誰も居ないこと確認し、手頃な木に杖を構える。


「『マナバレット』」


 そして杖から魔力の弾丸を撃ち放ち、木を粉砕するのだった。その様子に黒崎さんは目を丸くする。


「おお!すげぇな。魔法ってやつか?」

「はい。今のは魔力に指向性を与えて放つ魔法スキル『マナバレット』。あ、というか初級の攻撃系スキルは受付で手に入るんですけど……」

「あ、そうなのか?」


〈えっ?〉 

〈えっ?〉

〈さっきの反応的にやっぱ何も知らんのか?〉

〈つまり動画のアレもスキル無しでやっていたと?〉


「おう」


 そう、この人強いけど何も知らないのだ。ていうか普通に培った剣技だけでボスを倒せるって何?やばすぎない?


 私の内心と一緒にコメント欄はザワめいている。


「まあ大丈夫だろ。俺には剣さえあればいい」

「まあ、武器系のスキルストーンをセットする人が大半ですけど、外から武器持ち込みする人は偶に居ますし……」

「なら問題ないな」

「はい」


 持ち込み武器は構造が単純な物のみ持ち込み可能だ。銃とかは電子機器類は基本壊れる。それでもみんな武器系スキルの方が強いからそちらを使う。


 そう思うと……うーん色々と異常だ。身体能力とか。でも話が進まないのでツッコミはやめておく。


「私は杖とマナバレットを装備してます」


 私の指刺した場所を覗く黒崎さん。杖/マナバレットと書かれている。このように、攻撃系スキルストーンは1つなら武器系スキルストーンに紐付けて2枠消費するところ1枠に圧縮出来たりする。


 だから6つの枠に最大7つになるのだ。


「他にも色んなスキルがありますけど、私も1週間前ダンジョンに来たばかりなので初期装備ですね。お金とかドロップアイテムでスキルストーンを獲得する事ができるので頑張りましょう」


 ざっと説明は終了する。私の説明で理解出来ただろうか?心配だ。


「おう、分かった。でもホント詳しいのな。頼りになる」

「えっ!?そ、そう……ですか?」

「ああ、どうやったら身につくんだ?」

「えと……ダンジョン配信、昔から好きでよく見てたんです……それで知識だけは着いてて……先週やっと勇気出してダンジョンにって感じ……です」


 またストレートに褒められて頬の熱を感じ、たどたどしく答えた。真っ直ぐすぎてズルいよ……!


〈また照れてるw〉

〈可愛い〉

〈草〉

〈オタク特有の早口はどこへ?〉


「ま、またみんなそうやって言って……!もう!静かにして!」


〈……〉

〈……〉

〈……〉


「やっぱやめて!」


〈草〉

〈草〉

〈デジャヴ〉

〈この流れもう見たw〉


「ははっ!ホント面白いな!」


 天丼ギャグか!……まあ黒崎さんも笑ってくれてるからいいか……。


 さて、スキルセットは私は杖/マナバレット。黒崎さんはスキル無しと分かった所でいよいよ2層のダンジョンへ入る。


 ギルドからダンジョン入口に来たように、光の中に足を踏み入れる。


 するとダンジョンの何処かへ転移させられるのだった。浮遊型ライトが自動で展開、点灯して辺りを照らす。目の前には木の根が生い茂る道が続いていた。


「うおっ……木の根がびっしり……!」

「ここはフォレストダンジョンですね。自然系の罠や敵が現れます」

「なるほど……木なら切れる。問題無し」


 ただの木とかでは無いんだが……この人ならなんだって切ってしまいそう。そんな信頼がある。


 こうして初心者2人でダンジョンに挑むのであった。

 

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陰キャダンジョン配信者の私でも恋していいですか?〜黒衣の剣士に助けられてバズっちゃった件〜 竜田揚げゆたか @mutuki647

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