甘い狼

海星

第1話 葛藤

「かけ…お願い…」

「いいの?止まんなくなっちゃうよ?」


かけるが意地悪な甘い顔をして僕を見降ろす。


「いい…」

「そんな目されたら本性出ちゃうよ?」

「出して…」


翔の膝の上に乗って抱き着いていた。

普段の僕らとは正反対。


「…どうしたの?なんかいつもと違う。」


翔はほんの少しの変化に気付いていた。


「なんでもない。」

「隠さないで。」

「……」


僕は無言で翔にふんわりと唇を重ねた。


「…凌太、ちゃんと言わないとわかんないよ?」

「大好き…お前が好き…翔…」

「大丈夫。僕は男にも女にもなれない。だから、凌太は間違ってない。」


翔は少し高めの声で落ち着いてそう言うと、僕をしたから強く包み込んでくれた…。


昔から翔本人もたまにコントロールに困るくらい何故か力だけは強かった。


「…翔が好き。可愛いお前も、今みたいなお前も、かっこいいお前も、優しいお前も、どんくさいお前も…全部、全部、全部…好き。」


僕は昔からずっと葛藤していた。


『ゲイ』にはなりなくなかった。

世間から冷ややかな目で見られたくなかったから。でも、翔は男。でも、翔が好きで好きでたまらない。でも、翔は、男…というより『翔』っていう『全く別の性』。

付いてるものは同じ。むしろ俺のより長いし太いし…。男らしい…。

でもそんなの気になんないくらい可愛いのにかっこいいし優しい…。


小さい頃から翔を知ってる。

その時からずっとずっと翔が好きだった。

そしてまた日々増していく…。


それがたまに胸が疼いて体が疼いて抑えられなくなる…。だからといって攻めたいわけじゃない。


そう…翔から来て欲しい…。

でもこんな思いを抱えた自分が一番『嫌い』だった。

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