第13話 鬼の変化(イザナの場合)


 イザナ視点


 私は目の前に存在する絶望を象徴するかのような竜を恐れていた。


 荒々しい漆黒の身体と押しつぶされそうな覇気に、私は無意識で身体を震わせてしまう。


 カグツチ達が竜に近づくのを見て、震える身体を何とか動かし、私も竜へと近づく。


 話していると、悪人ではないと分かるのに恐怖が拭えずに、逃げるように集落へと戻った。


 でも、村長はカグツチ達の説得により竜との共存を目指すことになり、準備を済ませると森へと向かっていった。


 私はこの集落から出ていっても野垂れ死ぬだけだと理解し、震える体で竜の元に戻ろうと森へと足を踏み入れた。


 森を歩き、竜に近づいていると、目の前から突然禍々しいオーラを纏ったオーガが現れ、カグツチやスクナや黄泉を吹き飛ばして無力化した。


 そんな光景を見た私は、怖くなり逃げたくなったが、ミロクさんと比べると恐怖が無くなって、冷静さを取り戻した。

 冷静になった私は、覚悟を決めてスキルを発動させてオーガに近づく。


「炎雷」


 赤色の炎と金色の雷を体に纏わせ、そのエネルギーを世界に干渉させて、私だけの速度を加速させることで、瞬間移動のようにオーガに近づき、首筋を斬る。


 しかし、その首筋は硬すぎて、私の刀を弾き、オーガは無防備となった私のお腹を蹴り飛ばす。

 オーガに蹴られた私は木に叩きつけられて意識を朦朧とさせる。


 ゆっくりと近づき私達にトドメを刺そうとするオーガの腕が、何者かによって突然斬り落とされた。


 そして、私の前には優しそうな笑みを浮かべる、可愛らしい少年が居た。


 私は少年の放つ覇気のような威圧感で、竜であるミロクさんだと分かると、私は不安そうな目でミロクさんを見つめる。


 そんな私の視線に気づいたミロクさんは、微笑みながら私の頭を優しく撫でると、姿を消すと同時にオーガの首筋に現れ、首を斬り落とした。


 その姿に目を奪われた私を、1つの感情が埋めつくしていた。


「好きになってしまいました…ミロク様」


 私は頬を赤く染め、だらしない顔でそんな呟きを零した。

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