案件23.復讐のコズド

 ヒトリバコに閉じ込められた人々を人質にとられたリチャウターは、アダウチオニに抵抗できず何度も殴り蹴られ地面に倒れた。


「ぐぅ・・・あ・・・!」

「動くなっつってんだろ」


「・・・お前は本当に、【浅刺あさとげカズト】の身内なのか?」

「先代聖女様の暗殺に関わっダ!!」


 その直後アダウチオニは、リチャウターの身体を思い切り踏みつけた。


「そうだよオレはその息子だ!!親父は昔、聖女に救われ心から尊敬していた!」

「親父が聖女を殺すワケがねえんだよ!!!」


「だがテメェらは!親父の言葉を聞き入れず犯人だと決めつけ自殺に追いやり、オレたちを迫害した!聖女殺しの一族とぬかしてなあ!!!」


「家を焼かれ、他人に石をぶつけられ、家族はオレを残してみな殺された!!顔の傷もその時つけられた!!!」


「だからオレはこの世界に復讐する!!オレたちを迫害し手を差し伸べなかったテメェらを、一人残らず叩き割るためにッ!!!」


「・・・・・!!!」


 アダウチオニことコズドの言葉は、激しい怒りと悲しみに満ちており、リチャウターはその感情がビシビシと伝わった。


「・・・お前の復讐の理由はわかった」

「だから、この手で救ってみせる!!」


 その直後リチャウターの片足が腕に変形し、長く伸びたまま光輝くオーラをまとった。


(『救手すくいてレッグ』!そして『救手すくいてパルマ』!!)


 腕と化した足が、アダウチオニの背中をとらえ光り輝くオーラを叩き込んだ。

 リチャウターとの会話で感情的になったアダウチオニは、視野が狭まり気づけなかったのだ。


「んぐぅ!!」


 怨衣うらみごろもの効果が切れていたアダウチオニは、救手すくいてパルマのダメージを直に受けて怯み、思わずヒトリバコを手放してしまった。


「今だっ!!」


 リチャウターはこのチャンスを逃さず、ヒトリバコを受け止めると同時にアダウチオニから距離をとって、必殺技の構えに入った。


救手すくいてハグネード!!!』


 リチャウターは螺旋状に回転しながら光輝くエネルギーを放ち、アダウチオニをのみこんだ。


「ぬううううう!!!」


 アダウチオニは激しい光の渦の中で、飛ばされまいと踏ん張っていた。


(この光・・・オレの怒りを・・・憎しみを削ぎ落としてやがる・・・!!)


「冗談じゃねえ・・・!こんなモンで・・・オレの恨みを消されてたまるかぁあああああ!!!」


 なんとアダウチオニは、気合で救手すくいてハグネードをかき消した。

 しかし力をかなり消耗したようで、息が上がっていた。


「な、なんて奴だ・・・!」

「はあ・・・はあ・・・!今度こそ、叩き割ってやる・・・!」


 その時アダウチオニの背後から空間の歪みが現れ、サエラの声が聞こえた。


「コズド、アジトが陥落した。エスクディアンがそっちに向かってる、撤退しろ」

「オレに指図するな・・・!盾野郎も・・・叩き割ってやる!!」


「新人に押されてるお前が、特級に勝てると思ってんのか?」

「・・・ッ!!」


 アダウチオニは仕方なく、後退りしながら空間の歪みに入っていった。


「コズド!」

「覚えていろ!次に会ったら・・・恨みを込めて叩き割ってやる!!」


 そう言い残して姿を消し、戦いは捕らわれた人々を奪還したリチャウターが制した―




 その後、リチャウターは黒皇ブラックレクスとエスクディアンと合流し、ヒトリバコに閉じ込められた人々を近くの避難所まで送り届けた。


 迷子のウロは、ようやく両親と再会することができた。


「パパー!!ママー!!」

「「ウロー!!」」


「無事でよかった!」

「本当にありがとうございます!」


 両親はウロを抱きしめながら、ボンゴラにお礼を言った。


「いえ、お渡しするのが遅くなってすみませんでした」

「くろびてだんのおにいちゃん、ありがとう!」


 ウロの感謝の笑顔を見て、ボンゴラも優しく微笑んで手を振った。




 そして三人は黒火手団くろびてだんの事務所に戻り、ルニエルの採点を受けていた。


 今回のMVPはツドウ、悪堕者シニステッドのアジト攻略とさらわれた人々の奪還を完遂し、4千点獲得した。


 ボンゴラはたった一人でアダウチオニを撃退に追い込み、彼に捕まった人々を救出したため700点追加された。


 アゼルはアイムストロンを撃破し、ツドウのサポートに徹したことで650点獲得した。


 カネリは人命救助に少し貢献しただけで、あまり目立った活躍ができず3点となった。

 

「よぉし!また一歩救世主に近づいたぜ!」

(そう言えばツドウさんのスコアは、10億点以上あるんだったな・・・)


「でも、アダウチオニの正体が浅刺あさとげカズトの息子とはね・・・」

「4年前の先代聖女暗殺事件は、ものすごい衝撃でしたから名前はよく覚えてます」


「そんなことがあったのか!?」

「お前はもっと世間に関心を抱け」


「コズドは人々に迫害され家族を失ったと言ってました、凄まじい怒りと悲しみを感じたから嘘ではないと思います」


「彼を救うことは、できるのでしょうか?」


「ボンゴラ・・・」

「呆れるほどのお人好しめ」


「・・・『救手すくいてハグネード』でも、浄化しきれなかったんだよね?」

「彼が負った心の傷は、おれたちの想像をはるかに絶する、簡単には救えないだろう」

「・・・・・」


「それでもボンゴラは救うんだろ?なら何度でも彼と向き合って、救う方法を考えよう!」

「ツドウさん・・・!」


「まずは人助けしてスコアを稼ぎ、ランクを上げるんだ」

「ランク?何だそりゃ?」


 カネリはランクについて全く知らないため、ツドウが説明を始めた。


「おれたち異救者イレギュリストは、実力に応じてランク分けされている。下から初級、3級、2級、1級、特級という感じでね」


「ランクが高いほど、難しい案件を受けやすくなるなどのメリットがあるんだ」


「ランクを上げるには決まった数のスコアを獲得し、年に数回行われる昇格試験に合格しないといけない」


「君たちは初級だけど、持ってるスコアが1万点以上だと3級試験に挑めるんだ」


「ん?ってことは・・・オレ3級になれんじゃん!」

「カネリは既に10万点以上だからね、早くて6月の試験を突破すればなれるよ」


(カネリに遅れは取らん、俺もあと1ヶ月半で1万点以上にしてやる!)


「3級になれば、悪堕者シニステッド関連の案件も多くなり、コズドに遭遇する確率も上がるってことですね・・・」


「そう、さらに救世会きゅうせいかいの機密情報を一部閲覧できるようになる。先代聖女暗殺事件に関する情報の中に、コズドを救うヒントがあるかもしれない」


「色々教えていただき、ありがとうございます!」


「コズドについて何かわかったら教えるよ、おれたちは救世主を目指す仲間であり好敵手ライバル、助け合って人助けしようぜ!」


「はい!」


「そうだ!三人に渡したいモノがあるんだ」

「なんだなんだ!?」


「ジャーン!南国で買った珍しい盾だ!これで黒火手団くろびてだん盾活たてかつしようぜ!」


ブラックにいらん!」

「なんだ食いモンじゃねえのか」

「あ、ありがとうございます・・・」


「そりゃないよ三人とも~」


 こうして黒火手団くろびてだんは、救世主になるための第一の目標を見出し、人助けに励むのであった。




『スコア早見表』

 

激熱げきあつカネリ(初級)

100187点(+3)


黒理くろすじアゼル(初級)

4607点(+650)


手差てざしボンゴラ(初級)

4501点(+700)


スコア100億点以上で救世主になれる!

まずは1万点以上を目指し、3級試験に合格せよ!


To be next case

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