才果て≪さいはて≫ 【未完成】

あさひ

第一話 始まりの能≪ビギニング≫

 沈んでいく

ただ息もなく、苦しみもない。

 これは夢なのだろう

じゃないと意識がないはずだ。

 しっかりと意識と感覚がある

水の味だけがしない

無臭で無味で内部だけには

なにも入らない。

《どうして沈んでいるんだろう?》

 どうしようもない状況に

ずっとこのままで終わりがないかと

心配になる。

 不意に視界の横を

何かが通り過ぎた。

《ん?》

 通り過ぎた何かを

目で追う。

《これは……》

 昔の自分が誰かに

絵を見せていた。

《懐かしいな》

 それは少女の時代に

母に賞を取った絵を自慢している

そういう情景である。

《そういえば絵が得意で嬉しかったな》

 美大に通っていた沈みゆく女性

柏木深都≪かしわぎ みつ≫

深淵に呼ばれ

現状において不思議な夢にいた。

 感傷に浸っている

その想いに反応したのか

呼応したのか

次々に浮かび上がる。

《なんでだろう? 今の姿がないな》

 深都が美大に通っていたのは

ゲームのイラストを描くためだ。

 しかしイラストを描いている

そんな深都はいない。

 最初に浮かんだのは

夢になる前の無自覚なもので

お母さんのためだった。

《そういえばお母さんが入院中だったな》

 心の声に

喜びを隠しきれない周りの青は

大きく映し出す。

 見たことのない姿だ

白衣を着た深都が

液体を持っていた。

《お医者さん?》

 視界の映像が

身震いするようにブレる。

《違うの?》

 心の声に呼応する

細かく映された部分に

研究所の文字が見えた。

《研究者か》

 おもわず

手を伸ばし掴む。

 薄っすらと

光が溢れ、幻のように消えていく

視界が揺らいで

真っ暗になった。


 けたたましい音が

部屋中に鳴り響く

金切りの音量の容赦はない。

「うぅ…… んぅ……」

 カーテンから差し込む

光の光線が直進してくる。

 ちょうど隙間から

目に入ってきた

眩しい太陽のおはようだ。

「朝だね」

 独り言が搔き消され

ゆっくりとした歩幅は

金切り音を停止させる。

「ごくろうだねぇ」

 優しく目覚まし時計を

なぞりドアへと歩いた。

 鏡を通り過ぎて

ようやく気付く。

①一から四は鏡を覗く

②四から六は無視して通り過ぎる


 ①の場合

「え?」

 そこには頭髪が

青くなった自分がいた。

 まるで夢で見た青が

纏わりつくよう。

①を選んだ場合は第一/二話を読んでください。


②はこのまま第一話をお読みください

 なんとなく奇抜な気がしたが

無視をする。

 どうやら一階が騒がしい

部屋が二階なので気が付かなかった。

 母がニュースに出ている

目を瞑りながら点滴に打たれている。

【世界で唯一の症例が見つかる】

 タイトルにそう書かれていた

どうやら眠っていることに関係はない。

 見た目を見た瞬間にわかった

二十代の頃に姿が戻っている。

 ニュースのキャスターが

医師から衝撃の内容を聞き出した。

「このままでは幼くなり続けた後に……」

 要約すると

若返り過ぎて逆に死ぬ。

 テレビの中で

不老不死の解明が可能かもしれないと

キャスターは息巻いているが

ふざけるなとボソッと吐いてしまった。

「ん?」

【え?】

 不意に兄弟と父の目が

深都と合う。

「どうしたんだ? 染めたのか?」

【キレイな青だねぇ】

 何の話かわからない

目の前のスマホで確認すると

頭髪が真っ青だ。

 心配そうに見つめる視点が

一つ多い気がする

だがそこには父と兄弟しかいない。

 不思議な感覚が

頭をなぞるが

何もわからなかった。

 第一話 完

次は第三話から

お読みください。


 




 

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