誰かの生きるために

ルイ

さようなら

俺はインターホンの音でドアを開けた


「ねえ、ひさし...ぶりだね。数か月ぶりかな....?わかれてさ.....」


今、俺の目の前で話している女性。名前は倫菊華嘉瀬しなぎくはなかぜと言う


「今更...なんのようだよ。」

そう言うと彼女は俯いきながら言った

「あの...ね?やり直してもらえないかなって。あの時は私も周りに流されちゃってさ」

震えながらの声だった

そんな彼女は最後見たときより大分やつれていた


だけど....


「帰ってくれ」

冷たく、そう言った


そう言うと彼女の顔は一気に震え

「...だ。いや....だ。帰りたく...ない....」

俺の服を引っ張り抵抗した。


「離してくれ」


「やだ....」


言葉で言っても聞かないのなら仕方ない。そう自分に言い聞かせ俺は力づくで引っ張るのをやめさせた

彼女は抵抗していたがやつれているせいか、力が弱く簡単にやめさせられた

そのことに少しの罪悪感がわいたがなんとか耐えてドアを閉めようとする


「待って!」

そう言って彼女は足を挟もうとした


俺はその足を蹴ってドアを閉めて鍵をした




ドンッ!ドンッ!ドンッ!


「あけてよっ!あの事のことなら謝るからっ!ごめんなさいっ!だから....だから」


コンッ!


「あけ....てよ....」



「......ッ!」

駄目だ

どれだけ開けたいと思っても駄目なんだ

何を言えばいいのかわからない。どうやって許せばいいのかわからない


「グスッ.....」

一体どこで間違えたんだろう。どこなら引き返せたのだろう


ドア越しにまだ彼女の気配がする

彼女もドアを背にして座っているのだろうか

そうならば彼女にも聞こえるように言った







「さようなら」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る