切り抜き動画その3


『忍者とはありとあらゆる炎上を阻止するために存在する、対電脳の刀。忍者とは悪意ある闇の全てを斬る存在でなければならない。彼らが斬るのはあくまでも悪意ある炎上であり、それ以外のものを切り捨ててはならない』


『しかし、これを悪用する様々な勢力、まとめサイト、『バズり』を狙うインフルエンサー、闇バイト……』


『悪意を持ってコンテンツ流通を炎上させようという勢力に対し、ガーディアンは瞬時に対応し、これを一掃してきた』


『様々なメディアで展開された『アバターシノビブレイカー_対電忍』は、この一連の炎上事件をモデルとしたフィクションである』


『……と、表面上はそう認識されていた』


 まさかの忍者構文方式の男性ナレーション。やはりというか、今までの切り抜きと同じ人物の様子。


 今回はバックに映像がなく、製作途中で黒バックや権利的な事情で黒バックではない。意図的な物だろう。


【特報】


 そして、白文字の特報の文字……。これが示すものとは一体?



 次のシーンは、ある人物がパソコンで視聴している配信動画……というものだった。


 時計が分かるようなものが確認できる個所はないが、パソコンの時計は9月30日を示している。


 つまり、時系列としてはフェア・リアルの一件も含めて決着した辺り、かもしれない。



『一連のSNS炎上を企む勢力、とりあえず〇〇炎上させておけ……に代表される勢力は一掃した』


『これでわかるだろう。ガーディアンだけでなく、SNSを悪意を持って炎上する勢力は誰であろうと容赦はしない』


『SNS炎上さえしなければ、こういう手は実行しないのは保証されている。それをディストピアと例える人物や、まるで新日常系の世界と言うような人物もいるが……』


 ある人物が視聴していた配信、そこに映し出されているのはパワードスーツを装着したような外見の人物だった。


 スーツの形状は、いわゆる軽装タイプのスーツにアーマーが装着されるタイプ、特定のゲームなどがモチーフになったものではないのは確かだろう。


 これがVTuberの類であれば珍しくもないが、画像的な意味でもリアルの配信者だ。


 その証拠に、背景は合成と言うよりは、ロケスタジオを思わせる箇所が散見されている。


 手法としてはガーディアンの動画でよくあるパターンだが、この人物はガーディアンではない。


 声の方も男性であるのは事実だし、先ほどの冒頭ナレーションとメタ的に言えば担当声優が同じだ。


 一体、どういうことなのだろうか?


『今やSNS炎上勢力は、過去の歴史で言うテロリストと同等の行為を行っているといってもいい。海外経由でデスゲーム禁止が明言されたソレに逆行している動きだ』


『殺傷行為をしなければ人を傷つけても問題はないという認識……そうした考えで行動する炎上勢力がいる限りは、こうした行為がなくなることはないだろう』


『銃刀法違反などのような法律があるとはいえ、そこから別の手段を用いて凶悪犯罪を行おうとする勢力……それを私は一掃する』


 話し方は、いわゆるAIによるフェイク動画ではないのは明らかなのだが、口調で言うと強調する部分がピンポイントで、あまり叫ぶ様子もない。


 強調するのは、SNS炎上勢力、テロリスト、闇バイトと言ったようなワードのみだ。そうすることで、そうした勢力は明白的に犯罪者と印象付ける手法、なのだろう。


 逆に言えば、他の炎上系配信者は煽りスタイルであることも多く、この人物はそうしたスタイルを行わない事でオンリーワンをアピールしている、と。


『ここ最近、テレビなどのメディアに出ている闇バイト、匿名型の犯罪組織、そうした勢力もSNS炎上を起こす悪意ある勢力と認識し……それを私は一掃する』


 この人物の名前は、キング・プロテア。チャンネル名も同じく『キング・プロテアチャンネル』となっていた。


 いわゆる暴露系と呼ばれるようなジャンルの配信者と思われがちだが、そうした勢力でさえもキング・プロテアの話をしたがらない。


 何故かと言うと、キング・プロテアは暴露系配信者もターゲットに含めているのだ。悪意ある炎上系配信者、と言う認識なのだろう。



「何故、こうした勢力は完全根絶されないのだろう」


 キング・プロテアはパワードスーツを解除し、インナースーツ姿で配信終了後の小休止をしている。


 もちろん、その場所は自宅などではなく、配信を行っていたスタジオだ。


 スタジオの場所は自宅から1キロ圏内の草加市にあるのだが、その場所は何とゲームアミューズメント施設としても有名なオケアノスの内部にある。


 最近になってVTuberが増えつつあってか、配信者専用のスタジオを作り、そこで様々な企業がスカウトをするための施設……という目的でオープンしたらしい。


「対電忍、ブラックバッカラ、そして……ロードオブパルクール……」


 その外見はアーマーの影響で色々と分かりづらい個所もあったが、実は女性だった。


 顔はカットや映し出されている場面的な箇所もあって、完全に見えない。しかし、若干の巨乳で有る個所などは分かるという感じか。


 だからと言ってそこをアピールするような服装ではなく、ARゲーム用のインナースーツを着用してスタジオにやってきたことから……そういう事なのだろう。


 彼女もまた、『ロードオブパルクール』に若干の関心を持っているが、参戦には消極的であった。


 ため息交じりにSNSを見る姿は、ある意味でもガーディアンのソレとは全く違う。


 ガーディアンはSNS炎上を察知して速攻を決めるが、キング・プロテアの場合は配信でああいった言動をするものの、すぐに行動を移すことはない。


 ある意味でも明らかな動機を見つけてから、動くという事なのだろう。ガーディアンが炎上させたという行動だけで動くことに対して……。

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