リビルドオブパルクール-リアルパルクールランカーVSパルクールVTuber-

アーカーシャチャンネル

プロローグとなりそうな切り抜きされた断片

切り抜き動画その1

 この世界は闇に包まれようとしていた。


 本当の意味での正義は……試されているのかもしれない。


 そして、一連の忍者構文を巡る争いが始まり……今に至る。


 そう、全てはこの時の為の序曲だったのか?


 過去にあった様々な事件は、このための伏線だったのか?


 全ては……この時に。


 一度は平和を取り戻しつつも、混沌の時代になりつつあった……令和日本。



【速報】



 次の瞬間、黒バックに白文字で中央に現れたのは、まさかのテロップだったのである。

 

 以前には予告編のCMが流れたこともあったのだが、同じ男性ナレーションで……この表示とは。



 場所は、以前が東京駅から草加駅に切り替わったのだが……今回は草加駅から始まった。


 電車から降りる乗客は多いのだが、祝日とは限らないだろう。


 あの草加市であるのが間違いないのであれば、だが……。


「全ては忍者構文から始まったわけじゃない。すでに……」


 電車から降りてきたのは、一人の男性だった。彼は背広姿ではある一方で、ここに来るのが初めてではない様子。


 その証拠に、彼はそのまま目的地へ向かうかのように歩いていたのだ。もちろん、歩きスマホなどはせずに普通に歩く。


 身長は周囲の歩行者などと比べると、そこまで高いわけではない様子。170と少しか?


(あれは?)


 彼が電車から降り、駅のホーム経由で目線に入ったもの、それはあるVTuberだった。


 企業勢では見たこともないような外見なので、もしかする個人勢なのだろう。


 いかにもファンタジーを思わせる外見の人物で、遠くから見ても明らかに女性だとわかる。青色のポニーテールも特徴的だが……。


 身長はそこまで高くはなく、165位か? 服装を見る限りは、そこまで露出が高いものではない様子。


 草加市内はコスプレ可能とはいえ、限度と言うものはあるので……それを踏まえている可能尾性はある。


 企業系VTuberがリアルで姿を見せるなんて、一歩間違えればトラブルが起こるのは確実。だからこそ、彼はこの人物が個人勢だと思ったのだろう。


 しかし、ここは草加市であり、VTuberもリアルで街中に現れても違和感のないような世界でもある。


 実際、企業勢でもフェア・リアルが秋葉原に姿を見せた案件を、彼が知らないわけはないのだ。



『貴様たちのやろうとしていることは分かっている。そのかばんに入っているものを転売する気なのだろう?』


「これは盗んだものではない。オークションサイトに出そうが、フリマアプリに出そうが問題はないはずだ!」


『確かに盗品でなければ、その問題はないのだろうな。しかし、それを正規ルートで買うことのできなかった人物からすれば、フリマアプリなどで売られているそれは転売……』


「お前も人を闇バイトと決めつけて、手柄を得ようという勢力なのか? 逮捕された迷惑系配信者の集団のように」


 女性の目の前にいるのは、鞄を持った一人の男性。服装的にも、明らかに闇バイトのそれを思わせる様子。


 実際、彼女の方もそれに気づいたからこそ彼の行く手を遮ったのだ。


 しかも、彼女の方は彼単独ではなく複数人いることを把握済み。つまり……そういう事なのだろう。


 男性の反応を見る限り、彼を闇バイトと決めつけている自称正義マン……に見えなくもないような光景ではあるのだが、周囲はそう思っていない。


 むしろ、男性側に対して「あいつ、終わったな」という反応の方が大半だろう。


『私をあのような集団……あちらと認識するか? その考えをしているようでは、視野が狭いと言わざるを得ないな』


 彼女の方は表情を一切変えていないし、彼の発言に一切の動揺をしている気配もない。


 それを踏まえると、彼の方が逆に相手を間違えた、と言わざるを得ないのだ。


 周囲のギャラリーは、明らかにVTuberの彼女こそが正義と判断はしないが……似たような反応なのだろう。



「オークションに商品を出品するだけで転売ヤー呼ばわりならば、美術品オークションやチャリティーオークションも転売ヤーと呼ぶのか?」


 彼の方は逆に激怒し、唐突に武器を構え始めていた。その形状は、明らかに大剣にも見えるのだが……向こうは眉ひとつ動かさない。


 武器の方は実体を持っているものではなく、いわゆるAR……拡張現実で生み出されたものと言えるだろうか?


『物には限度と言うのがある。やってはいけないラインを転売ヤーは知らないらしい。それこそ、ひと昔前の……』


 彼女の方が右手指をパチンと鳴らし、何かを展開する。それは、ある意味でも飛び道具と言えるような武器だった。


 呼び出したのは明らかに1本の剣にも見えるような武器だったのだが、瞬間的に複数の刃に分離……したようにも見えるかもしれない。


 彼女としては、ここまでの強硬手段は取りたくはないのだろう。若干のため息交じりな台詞からも見て取れる。


『先ほどの言葉、そっくりそのまま返してあげよう。美術品オークションやチャリティーオークションには、それに応じた目的がある』


 1本の剣と思われたものの正体、それは明らかに鞭にも見える武器だったのである。


 しかし、何かワイヤーのようなものを確認できない為、鞭と言うには表現が微妙かもしれない。


 むしろ、ワイヤーは可視化不能なレベルでステルス迷彩が施されているのではないか、と言われても不思議ではないだろう。


 そんな機能を持ったARウェポンを展開するにしても、彼女は一切の躊躇をしていない。むしろ、悪は瞬時に一掃する……と言うような展開だ。


『転売ヤーは自分が利益を得られれば、他はどうでもいい。むしろ、敵を多く作ろうが自分たちが『バズる』きっかけになれば、更に利益を得られる……』


 彼には彼女の放った剣のワイヤーは認識できない。実体を持ったワイヤーではないので彼に絡まったとしても、そこから体に食い込み、大量の出血……にはならない。


 そこまでの武器がARで再現されたら、それこそ殺傷事件となってARガジェット自体が生産中止になるのは確実だ。


 実体が存在するのは、あくまでもワイヤー部分ではなく、剣の個所のみだ。それも、複数に分離している状態の、剣である。



「こいつは何を言っているんだ? むしろ、『バズり』を狙っているのはお前たち……」


 それ以降のセリフを言おうとした瞬間、彼女の眉ひとつ動かさないような表情が一変する。


 右手に持ち替えた剣を、彼女は振り回したと思ったら、鞭のようなアクションで彼の大剣を弾き飛ばし、瞬時で無力化した。


 そのアクション、わずか数秒。10秒も経過はしていないだろう。


 よく、このアクションシーンを再現できたものだ、とこれが実写版であれば思うかもしれない。


 とどめになったのは、分離したようにも見える剣から放たれた光……だろうか。


 この剣の正体……インターネット上では蛇腹剣と呼ばれるものにギミックが類似している、と言ってもいい。


 むしろ、可視化不可能なワイヤーの影響で、別の武器にも錯覚したギャラリーもいるかもしれないが……。



 その後、気絶した彼は駆けつけたガーディアンによって拘束、逮捕されることとなった。


 この人物の証言でトレーディングカードを転売する闇バイト勢力が明らかとなり、転売ヤールートのひとつが一掃されることに。


 しかし、彼女の目的は果たされていない。それは、空を見上げる表情からも読み取れる。


『闇バイト勢力を一掃しなくては、全ては終わらない。このシステム……』


『ロードオブパルクール、それを使ってでも全ての悪しき勢力は一掃し、コンテンツ流通を変えなくてはいけない』


 彼女の名はエウロペ、『ロードオブパルクール』のシステムを一変させるアップデートを行った張本人であり、対電忍騒動の前に起こった様々な転売ヤーを巡る事件は、彼女が元凶ともいわれていた。


 埼玉県内で転売ヤーに絡む事件が起きないのは、こうした闇バイトなどを瞬時に対処する勢力がいるのではないか、と。


 その正体が、実は『ロードオブパルクール』と言うゲームに会ったことは、この段階では誰も知らない……むしろ、システムを生み出したエウロペ本人だけだろう。



 実際、これに関して言えば対電忍で活動していたガーディアンでも見破ったものがいないからだ。


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