アドバンッ!!~Climbed stage~【圧縮版】

麻田 雄

第1話


 「結局、進路を変える気はないのか?」


 対面に座った教師は呆れた様子で尋ねてくる。


 「あーはい。そうっすね」


 俺は適当に答えた。


 「成績もそんなに悪くないんだし、進学で東京行くんじゃダメなのか?」

 「大学行ってやりたい事も無いし、そもそも家には俺を進学させる金は無いっすよ」

 「奨学金制度を使っても……いや、就職だって良いんじゃないか?」

 「それだと時間取れなくなるじゃないっすか。本末転倒っすよ」

 「とはいえ進路希望がフリーターってのは……」

 「とりあえず。そのうちウチの学校のウィキで出身の著名人のところに載りますから」


 その言葉を聞いた教師は俯いて大きくため息を吐いた。



  ◇  ◇  ◇



 ふざけている訳ではない。

 大真面目に言っていた。

 とはいえ、そこに不安や疑念が無い訳でもなかった。

 ただ、今やらなければ絶対に出来ないし、後悔するとも思っていたから”やらない”という選択肢がなかったのだ。



  ◇  ◇  ◇


 ―― 一年後 ――


 俺は東京に来た。

 バンドメンバーと一緒に。


 全員がフリーターという訳では無かった。

 メンバー四人のうち、二人は大学生、俺ともう一人はフリーター。


 家にはそこまで経済的な余裕もなく、俺を都内で一人暮らしさせる事は難しかった。

 必然的に自活するしかなかったのだ。

 俺もそれで良いと思っていた、自分のやりたい事をするんだし自分でやるべきだと……。


 この大都会で俺達に何か出来るのか?

 そんな期待と不安を抱きながら……。

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