ふたりはホモショタ~魔法少女に変身するショタと変身ライダーとなるショタの二人が協力して世界を救うそうですよ?~

リヒト

プロローグ

 2025年の某月。

 長らく停滞していた経済に苦しみながらも、自国株の最高値を更新し続けるなど僅かに明るい兆しを見せ始めていた日本のある都市。


「きゃぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ!?」


「な、なんだよ、何だよっ!?お前らはぁ!?」


「うわぁぁぁぁぁぁあああああああああああん、おかあさぁぁぁぁぁぁぁああああ」


『きけぇ!きけぇ!人類よ!これが私たちからの罰である!天使からの罰だ!とくと受けよっ!』


 そこを今、背中より一対の純白の羽を伸ばした天使たちがその手に槍を持ち、街を破壊しながら人々を串刺しにして回っていた。


「……」

 

 街が燃え、人々たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。

 そんな様を引き起こす天使たち……そんな地獄絵図を、一つの高層ビルの屋上から見下ろす二人の少年がいた。


「またか。やっぱり、この辺は天使たちが活発だね」


 二人の少年のうちの一人、白髪に赤と黒のオッドアイというずいぶんと珍しい井出立ちをしている少年、工藤くどうぜろが深刻な表情で口を開く。


「う、うん……そうだね」


 そんな零の言葉に頷くのは彼の隣に立っている肩の長さに揃えられた男の子にしてはずいぶんと長い髪を持った少年、一条いちじょう氷空そらだ。


「行くか」


「えっ?」


 地獄絵図となっている街の様子を高層ビルから眺めている零は何処からともなく一つのベルトを取り出し、それを腰に巻く。

 その巻いたベルトは明らかに普通とは違っていた。

 少年がベルトを巻いた瞬間、バックルの位置にある複雑な機構が施された風車が音を立てて回り始める。


「変身」


 そして、その少年はずっとその手に持っていた一つのカードをたった今、己の腰に巻きつけたベルトへとかざす。

 その瞬間。


『ファースト』


 ベルトから機械的な声が響いてくると共に、零の体は光に包まれ、体が大人の大きさにまで成長する。

 そして、その光が収まったと同時に、その体はメタリックな装備に包まれ、相貌は仮面によって隠されていた。

 

「叩き潰す」


 ベルトから鳴り響く風の音が世界を包み込む中で、その少年は一振りの、黒色で禍々しい剣を空間から引き抜く。

 零が巻いたベルト。

 それは、この世界に一つしかない変身ベルトだった。


「あっ、ちょっ!?」


 変身ベルトを用いた零の変身。

 それからは遅れて。


「早いよ!」


 氷空も何処からともなく杖を取り出し、それを手早く振るう。


「へ、変身」


 そして、一言。

 その言葉と共に、杖から世界を照らすような光が溢れ、それらがドレスとなって氷空を、彼を───彼女を彩る。


「世界に輝く魔法少女ラルカ、参上っ」


 魔法少女ラルカ。

 そう名乗る氷空の姿は男の子でありながら、ただ服装が変わっただけだというのに神さえも振り向かせるような美少女としてそこに立っていた。


「行くよ、氷空」


 そんな氷空へと零は声をかけ。


「うんっ、零」


 彼女なのか、彼なのか悩む空が頷く。


『いつものように現れましたか……』


 そんな二人へと、これまで街や人の破壊に夢中となっていた天使たちが口を開きながら近づいてくる。

 その天使たちは剣に杖を持っている零と氷空の二人を前に、既に戦闘態勢となって槍を構えていた。


「んっ、もう気づいたか」


『あれだけピカピカと光りながら変身していたら馬鹿でも気づくでしょう』


「それもそうか」


 ベルトによって変身した変身ライダーと杖によって変身した魔法少女。

 その二人は屋上から共に飛び立つ。


「天使ども。攻守交替だ。今度は僕たち人類がお前たち天使をボコす」


「そうだよ!僕と零のコンビでどんな奴もメタメタにしてやるんだがら!」


『ほざけ、人間どもっ!』


 そして、何もない空を平然と駆け抜けながら、これまで好き放題に暴れていた天使たちへとその手にある武器を振るうのだった。

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