第39話 天宮流

「クッ!」

 胸を浅く切られてしまった。

「今のを避けるのか、流石当主様だ」

「チッ、痛いじゃないか(当主?何の事だ?)」

「珍しいね、君、防弾チョッキ着てないんだ、まぁそっちの方が好都合だけど」

「アレは体が重くなるから嫌いだ、身軽の方が僕にとって丁度良くてね、どうせ弾丸なんか当たったら死ぬだろ?」

「それもそうか」

 男がもう一度刀を構え、同じ姿勢になる。そして一瞬で距離を潰される。

「チィィ!」

 キンッ

 既の所でナイフを間に入れ、ガードする。

「(脇構えの状態から、ボクシングのダブルレッグによる高速移動、コレは師匠が使ってた技と一緒だ。でも、何でコイツが知ってるんだ?)」

「今のも外すか、やっぱり戦いはこうでなくちゃ」

「お前、さっきのは師匠の技と同じだ、何でお前がコレを知っている?」

「あぁ、そうか、そうだよな、お前は俺が誰かすら分から無いもんな」

「(正直、コイツが誰なのかはどうでも良い。時間を稼いで、隙を作るだけだがらな)」

 ショルダーホルスターからウェブリーを抜く。

「隙を見せ過ぎだ、馬鹿が」

 そのまま男に向けて速射する。

バンバンッ キン

「おいおい、危ないじゃないか」

「化け物かよ」

 男は体を捻り、弾丸を体の中心からそらし、もう一発を刀で弾いた。

「何で僕を狙う?」

「そりゃあ、当主の座が欲しいからだ」

「当主?たがら何の事だよ?」

「天宮家当主、天宮 永夢、お前の首を取れば、俺は当主の座につける。そういう事になってるだろ!」

 男が上段の構えになり、感情のまま突進して来た。

「(動きが単純だ、このままカウンターを取る)」

 腰からカランビットナイフを抜き構える。

「隙ありだ」

ザッ

 ナイフが脇腹を切った。しかし…

「(なんだこの感触、ゴムを切ったみたいだ)」

「痛いじゃないか」

「お前、感情のままに刀を振り回しやがって、ソレでも剣士か?」

「今からお前の殺して、一人前の剣士になってやるよ」

 男が刀を構え、ゆっくりと近づいてくる。

「人斬り一族の当主なんて、欲しけぇりゃくれてやる、僕はこの苗字になったのはな、あの人との約束を守るためだ!」

キンッ

 刀とナイフがぶつかり、甲高い金属がなる。

「あの女との約束か?あの裏切り者なんて……あぁ、思い出すだけで腹が立つ、そして、お前の顔を見るだけで腸が煮えくり返りそうだ」

「逆恨みか?」

「逆恨みじゃねぇよ、ただの恨みだ」

 刀に籠められた力が一気に増す。

キリキリッ

「(クソが、急に強くなりやがって、何か起死回生の一撃を考えないとな)」

 バックステップで距離を取り、ポケットからあるものを出す。

「おらよ」

 そしてソレを足元に投げた。



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