第32話 訪問者

「おい、皆起きろ」

「ハッ!しまった、寝てしまって居た」

 時計を確認すると、時計の針は四時過ぎを指していた。

「どうしたんですか?海智さん」

 喜太郎が目を擦りながら質問する。

「シーッ、何か二足歩行の足音がする、誰か来たみたいだ」

「(救助が来たのか?いや、何かが可怪しい)」

コンコン

 静寂の中、誰が引き戸をノックした。

「やった!助けが来た!」

 喜太郎が玄関に駆け込む。

「待て喜太郎!何かが可怪しいぞ!」

 僕は抱えていたM16A4のセレクターをセーフティからセミオートに変え、チャージングハンドルを引き薬室に弾薬を込める。

「仮にそいつが人間だったら、僕たちの名前を呼ぶはずだ。何より可怪しいのは、こんな山奥になんの明かりも持たずに入っている事だ。こんな事出来るのは、能力者か人間以外だけだ」

 少しの沈黙が走った。その次の瞬間…

 コンコンッ

 その「何か」がもう一度ノックをした。それと同時に皆が武器を構える。

「喜太郎、扉を開けたら直ぐに離れろ、良いな?」

「了解」

バッ

 喜太郎が一気に扉を開け、バックステップで離れる。

「誰だ?」

 月明かりで照らされてる外とは違って、家の中は暗いため顔が良く見えない。少しの間の後、誰かがフラッシュライトで顔を照らす。

「マジかよ」

 照らされた顔は人間の物とは思えない物だった。皆が想像する通りのロボットの顔がそこにあった。

「あー、はじめまして、救助に来た方ですよね?私の名前は、郷田 一三と言います」

 何を思ったのか、一三が近づき自己紹介をした。

「おい、馬鹿!ソイツどう見ても人間じゃないだろ!」

「え?カッコいい被り物してるだけじゃないの?」

「お前、コレがカッコいいと思うのか?良いから離れろ」

「もう良い喜太郎、一三には何言っても聞かないから」

「ん?一三危ない!」

 気がつくとそのロボットがナイフを振り上げていた。

「チッ」

バンバンッ

 頭に2発の弾丸が命中した。

「やっ、ヤッたか?」

 喜太郎が演技でもない事を言った。

「ウソだろ……」

 頭に銃弾を受けてもロボットは平然と動き、一三に刃を振り下ろす。

「危ない!」

「おっと」

 一三が瞬時に反応し、バックステップで斬撃を躱す、それと同時に靴を脱いだ。

「あらよっと!」

 その次の瞬間、繰り出したのはヒクイドリの足による、まるでナイフの様な斬撃。

ドサッ

 一三の攻撃により、頭が切断された。しかし…

「おいマジかよ、まだ動くのか」

 ロボットは微動だにせず、平然とこちらに突進して来た。

「お前ら、コイツの弱点は頭じゃない、人間で言う心臓と逆の所だ!」

 元晴がホルスターからC96を抜く。

バンッ

 弾丸は見事、元晴が指した所に命中した。

バタン

 ロボットが床に倒れる。

「こんぶ、分かるなら早く言えよ」

「すまん、寝起きでメガネを付けて無くてな、目がぼやけて良く見えなかったんだ」

 そして、元晴が玄関から外を覗く。

「チッ、クソが」

「どうした?」

 僕も一緒に外を覗いた。少しずつ目が暗闇に慣れて来ると、僕も今の状況を理解した。

「ヤバいな、コレは包囲されてるぞ」

「皆!早く武器を持って備えろ!」

 この時の僕らはまだ知らなかった、この一夜がこの先、地獄になることを………

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