第31話 侵入

 あれから三十分ほど歩いた。

「はぁ~、おい一三、まだつかないのか?」

「アレェ?確かこの辺だったはずなんだけどな」

「おい、一三本当にあるんだよな?青木の分身もそろそろ限界だぞ」

「永夢……僕は大丈夫だよ」

「嘘つけ、返事に間があったぞ」

「あ!アレだ!」

 そして目の前に現れたのは、築七十年はあるであろう、ボロ家だった。

「コレ、別荘って言えるのか?」

「うん、一様爺ちゃん家だった場所」

「なら、入っても大丈夫だな」

「大丈夫な訳ねぇだろ!」

「鍵はあるの?」

「ん?ある訳無いじゃん」

「ハ?」

「はぁーこんぶ、そもそもコイツはな……」

ガシッ

 一三の頭を鷲掴みする。

「ここまで僕たちを導けただけで凄いんだよ。一三は日常生活に支障をきたす程の方向音痴なんだから。いや、コレはほぼ奇跡に近いな」

 そう言いながら頭をワシャワシャする。

「えへへ~、ありがとう〜」

「褒めてねぇよ、馬鹿!」

 バシッ

 軽く頭を叩く。

「じゃあどうする?誰かピッキングツール持ってる人、ピッキングしてくれ」

「馬鹿言え。法律で禁止されていて、特殊部隊ですら持て無い物を僕らが持てる訳無いだろ?」

「じゃあ……銃持ってるけど、大丈夫なのか?」

「その辺は物語の都合上仕方無い」

「そうか…」

「じゃあ永夢、マスターキーするか?」

カシャ

 そう言いながら、青木が持っているショットガンの薬室に弾薬を入れた。

「それもやめとけ。一様、人の家だぞ?」

「ならどうするんだよ?」

「この家は引き戸だ、開け方がある」

「ん?」

 僕は戸に近づき、しゃがみ込む。

「よっこらしょっと」

 引き戸の下に手を伸ばし、レール部分に指を入れる。

「フンッ!」

 ガタンッ

 引き戸が大きな音を立てて外れた。

「お〜!すげー」

「お前ら、悪用厳禁だぞ?」

「永夢、お前この知識どこで手に入れた?」

「………、秘密」

 そして、中に入る。

「うぉ!すげぇー、コレは!!」

「おいおいこんぶ、人家だぞ?あまり土足で入るなよ。って、マジかコレ」

 興奮しているこんぶの目線の先には、あの悪名高きナ◯ス ドイツの国旗があった。

「ヤッバっ、総統様のブロマイドにサインもあるぞ!見ろよ皆!」

「うわー、ヤベェなアイツ」

「おい一三、お前の爺さんどんな人だったんだ?」

「確か爺ちゃんはドイツに留学した事があって、ドイツ語が出来たんだ」

「ソレで?」

「おい永夢!コレ見ろよ!」

「なんだよ!今話してるの分からないのか?」

 元晴に視線を向ける。

「我が闘争のドイツ語バージョンだ!しかも2次戦当時の物で、保存状態も中々良い!コレは古本屋にも無い宝物だぞ〜」

「我が闘争のドイツ語バージョンなんか、日本で売れるか!そんな物、とっととしまえ!」

「どれどれ〜」

「コラァ!あぁ、もう良いや。で、続きは?」

「ドイツ語が出来たから、旧日本軍のドイツ語翻訳の仕事をしていたんだ。その関係上、何回も潜水艦でドイツに行って、ヒ◯ラーと対面した事があるって言ってたな」

「なるほどな、それで家にこんな多くのナ◯ス ドイツ関係の物があるのか」

「なぁ、皆!ちょっと良いかな?」

 海智さんが声を上げた。

「はい、どうかしたんですか?」

「皆疲れただろ?少し寝たらどうだ?」

「は?」

「いやいや、近くに敵がいるかも知れないのに、おちおち寝てられないだろ。そもそも、見張りはどうするんだ?」

「見張りは私に任せてください、丁度いい気付け薬があるので」

 そう言いながら足を擦る。

「もし、戦闘になった時の為に、少しでも体力を温存しておいた方が良いと思います」

「でも…」

「いいんだ」

「分かりました、でも僕は、一緒に起きていますよ」

「ハハッ、ソレは心強いな」

 各々が自分のテリトリーを決め始めた。

 僕は壁を背にして、M16A4を抱え座り込む。

「ハー、少し疲れたな」



 

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