第18話
その振動音は彼女のスマホだった。
メールの通知だったらしく、
それを読んだ彼女が
慌ただしく立ち上がり帰る準備を始めた。
「すみません那月くん。今日は急いで帰らないといけないので、お先に失礼します。
わたしは放課後は毎日ここにいるので良かったらまた来てくださいね。」
と1人で帰ろうとするので、
俺も立ち上がり
「送る」
と言うと、迎の車が来ているらしく
校門まで一緒に帰ることにした。
先程までは1人で歩いたこの道を
異性と一緒に歩くとは思ってもみなかった。
不良と呼ばれる男女がいる中で、
派手な身なりをしていない彼女は
優しそうな雰囲気を纏いながらも
どこか凛としていた。
しばらく無言が続いたが、
気まずい雰囲気はなく
どこか、心地よかった。
校門までがとても近く感じた
校門前に止められた1台の黒い車から
運転手らしき人が降りてきて
彼女を迎えた。
「おかえりなさいませ、莉世様。」
栗皮色をした髪の長身の男が言った。
「様はやめてください」
少しふてくされたような顔になった彼女の顔に
俺は少し口元を緩ませた。
車に乗り込もうと歩みを進めた彼女が振り返り
「那月くん、送ってくれてありがとうございました。また明日…」
俺はそれにコクリと頷き
栗皮色の髪の男は彼女が乗り込んだのを見ると
車のドアを閉め、
「莉世様と仲良くしていただいてるみたいで
ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。」と一声かけてから運転席へ乗り込だ。
俺は浅く一礼を返し、
車が見えなくなるまで消えた方向を見ていた。
夕暮れの中、
1人は車の中から外を眺め
少し悲しそうな顔
1人は運転しながら口角を上げる者
1人は自分が何をしたいのかわからない様子であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます