第5話
あまりにも目を逸らさないので、
変なことを聞いてしまった。
案の定マスターにも笑われた。
隠れて笑っているようだが、
肩を震わせているので全然隠せていない。
恥ずかしくなりシンフォニーを仰ぐ。
すると、端のスツールから腰を上げ
こちらへと向かってくる男。
わたしの座るスツールの隣へと座ると
「生ハム…貰うよ。」
片方の口角を上げてそう言ってきた。
この顔は馬鹿にしている顔だ。
絶対そうだ。
まぁイケメンと飲むお酒とご飯は美味しいことには変わりはないので、
わたしと男の真ん中に生ハムとカプレーゼも寄せた。
さっきまで肩を震わせ笑っていたマスターも
まさか私たちが一緒に飲むことになるとは思っていなかったようで、少し目を見開き驚いていた。
一応初対面なので、挨拶を交わしておく。
人としての常識だ。
「こんばんは。急に誘ってすみません。生ハム遠慮なく食べてださいね!」
「あぁ。」
透明のお酒を仰ぎながらそう返事をした。
やはり色気のある声だ。
静かにお酒を飲み進める。
この人の隣は何故だかとても落ち着いた。
だけど、少し緊張していたのか
2杯飲み終える頃には酔いが回っていた。
『桃ちゃん大丈夫??』
マスターの心配する声が聞こえる。
(大丈夫で〜す。)
口を動かすのも億劫で、
心の中で返事をする。
連勤の仕事疲れも相まってか
どんどん瞼が落ちてくるのを
なんとか堪えようと努力する。
その努力も虚しく…
まだバーにいるのに人生で初めて
お店で寝落ちてしまうという失態を犯した。
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