第304話

家に着いたのは午後11時。家の中は泥棒にでも入られたかのような散らかりようでアルコールの匂いが充満していた。



健はリビングのソファーに座り浴びるように酒を飲んでいる。私が話しかけると鋭い視線を送ってきた。




「その前に、まず俺になんか言うことねえの?」



「ごめん……」



「酒飲んでないと気が狂いそうだから許してよ。ていうか、どんだけ飲んでも全く酔えないんだけどね。で?話ってなに?」



「離婚してほしい……」



「はい?」



「健と離婚したい。今すぐ離婚届け書いてくれる……?」



「正気?」



「正気だよ。もう、一緒に住むのは無理だよ。」



「親父に、なんか言われたの?」



「お義父さんは関係ない。私が離婚したいだけ。健とは、これ以上一緒にやっていけるきがしない……」



「うそつけ、なんか言われたんだろ?なに言われた?まぁ、もう関係ないわ。俺、親父とは縁切ったから。」



「違う……。私がこの生活に耐えられないんだよ。健のことも、もう愛してない。だから離婚してほしい……」



「無理。」



「なんでよ……」



「離婚は死んでもしない。俺は、なんも悪くねえのになんで離婚なんかしないといけねえの?お前、ほんと自分のことしか考えてねえよな。」



「お願いだから…………」



「紫乃と離婚するぐらいなら俺は死ぬからな。お前の目の前で死んでやるわ。冗談だと思ってんだろ?俺は本気だから。」



「なに言ってんの……?」



「俺を死なせた罪を一生背負って生きていけよ。その覚悟がお前にあるなら、今すぐ離婚届け書いてやるわ。」

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