第264話

家の駐車場に着いたのは午後三時だった。蓮は今頃、美羽から話を聞いているのだろうか。どうするつもりなのだろう……



本宮さんに電話しないといけないのに手が震えてできなかった。やっぱり私は御手洗が怖くてしかたがない。



車の中で鬱状態になってるとスマホが鳴った。確認すると健の父親だったから更に気分が沈んだ。



「はい……」



「紫乃さんか?こっちから電話しないと永遠にかかってこないと思いましてな?電話させてもらいました。」



「すみません。今かけようと思ってたんです……」



「ほほう。なんか、うどんの出前に来た男を思い出したよ。あまりにも遅いから店に電話したら、とっくに出ましたって言われたから待ってたら、電話に出た男が家に届けに来たんだ。ほんと、いい加減な男だった。まぁ、この話は気にせんでくれ。」



「本当にすみません……」



「健から聞いたよ。妊娠したんだってね。本当におめでとう。会社の人らと飲みに行くと孫や子供の話ばかりで肩身が狭かったんだ。これでやっと話に入れる。それはそうと、家族に予定は聞いてくれたのか?」



「はい……。今日の夜九時なら全員大丈夫らしいです……」



「今日?またえらい急だな。まぁ、こっちとしては早い方がいいが。ちょうど今日は私も仕事休みだし今日にしよう。この前言ってた、すき焼きの店で大丈夫かね?三ノ宮駅から徒歩三分ぐらいだ。」



「大丈夫です……」



「そしたら、今日九時に予約入れとく。社長の友人の店だから、くれぐれも失礼のないようにな。あと、絶対にキャンセルはないようにしてくれ。では、切るぞ。」

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