第171話
美羽が席を立ったあと、俺はさりげなく店内を見渡していた。人気店なだけあって満員だ。
特にこれといって何の珍しさもない普通の蕎麦屋なのに、グルメ雑誌やテレビで取り上げられる程の有名店になっているのは味が美味しいからだろうか。それとも従業員がイケメン揃いだからだろうか。
見た限り男の従業員は十人ほどいるが、面接担当のやつは顔だけで選んでいるのかと思うほどに全員イケメンだった。それも透明感溢れる極上レベルの男前だ。
だけど俺は雨夜がどの男なのかは一目瞭然でわかってしまった。イケメン達の中でも一人だけ群を抜いてオーラがあるやつがいる。
ダークブラウンの髪を片耳にかけてヘアピンで止めている。その男は、ぼんやりと窓の外を眺めながら誰かと電話をしていた。
相手は誰なのだろう。なんとなく、おばちゃんのような気がした。今日告白すると言っていたが、電話で告白はあいつの性格上考えられない。
電話が終わるとヘアピン男は店の外に出ていった。すれ違い際に従業員が頭を下げて挨拶した。間違いない、あいつが雨夜だ。
「蓮ちゃん、おまたせ。」
「美羽、急用できたから帰ってもいい?三十分ほどで戻ってくる。」
「どうしたの?」
「おとんが倒れた。」
「え?大丈夫?」
「多分大丈夫だとは思うけど、とりあえず様子見てくるわ。よくあることだから心配しないでね?美羽は食べてて。また連絡するから。」
「うん、わかった。連絡待ってる!」
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