第79話

「……わかりました。今日は、とりあえず帰ってください。健が帰ってきたみたいだから、開けてくる」




そう言って立ち上がろうとした瞬間、腕を掴まれてまたすぐにソファーに引き戻された。



「なにがわかったの?」



「…………」



「ねぇ、何がわかったの?なんもわかってないくせに、その場しのぎで適当なこと言わないでよ。」



インターフォンは鳴り止むことなく鳴っている。私は何をやってるんだろう。肝心な時に鍵を閉め忘れ、絶対に閉めてはいけない場面できっちりと閉めている。




「……今すぐ鍵開けないと怪しまれる。約束します。今日のことは絶対に誰にも言わないから……このまま帰ってください」



「そんな交換条件無理。それ俺に何の得があんの?もうちょっと真面目に考えてよ」



「……そしたら、どうしたら帰ってくれるの?このままじゃ不法侵入で警察沙汰になるかもしれないんだよ?」



「三ヶ月。」



「……?」



「三ヶ月だけ待ってあげるから、それまでに旦那と話し合って離婚すること。それが約束できるなら今日は帰ってあげる。」

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