第78話

何も知らない第三者が聞いたら、結婚直前の恋人同士の会話だ。御手洗は、私たち二人が既婚者だということを忘れているのではないだろうか。



「御手洗さん……?」



「はい。」



「私、結婚してるんですよ……?」



「知ってるよ。」



「あなたも、結婚してるんですよね?」



「してるよ。そんなに疑うなら嫁に会わせようか?明日一緒に病院行く?」 



「……そうじゃなくて、私たちが結婚なんてできるわけないですよね?」



「どうして?」



「……どうしてって、普通に考えてありえないじゃない」



「だから俺は普通じゃないんだってば。」



「お互いに家庭があるよね……?それ以前に、私は御手洗さんを愛してないんです。離婚なんてしないし……あなたと結婚もできません……」



ごめんなさい。と震えた声で謝った瞬間、インターフォンが鳴った。天の助けだと思ってしまった。



「愛してないなら、これから愛してくれたらいいよ。家庭があるからなに?あんなゴキブリとの家庭なんか俺が一瞬で壊してやるよ。」

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