第17話
電車のドアが音を立てて開く。この駅周辺は割と大きなビジネス街、当然人も沢山降りる。
俺達も人の流れに逆らわず、ぞろぞろと改札へ。
「やっぱり人多くない?」
「もうお前の感覚がバグってんだって」
「うぅ、人酔いしそう」
無理もない。しかも皆同じ出口目掛けて軍隊のように早足で歩いていくもんだから、普段朝の通勤ラッシュを経験しない人からしたら異様に映るだろう。
「掴まるか?」
さりげなく腕を出すと直ぐに柔らかな手の感触。
「さっきのでハードル下がったでしょ、糸森」
「どうだろな」
実際そうなのだ。距離感の詰め方が尋常ではない、元気系ギャルってすごい。
昔はよく話していたが、あれから随分と時間が経った。見た目だけではなく価値観や社会的地位も変わったのだ。
それでもあの時を思い出させてくれる彼女には感謝しかない。
だからたまにはご飯でもご馳走しようと。
「今日は何時までこっちいんの」
「およ?もしかして一緒に帰りたい感じ?う〜んしかたないなぁ」
突然よく喋るじゃねぇか。勢いにびっくりするわ。
「まだ何も言ってないだろうが」
少し腕に込められた力が強くなる。寒いだけ、きっとそうだろう。
ビルの間を通り抜ける風は日に日に強くなっていく。今もまるで刃物を当てられているかのような感覚が首元を襲う。
というかこいつどこまで着いてくるんだ。そろそろ会社の人と会う可能性がある。
「まぁお昼まではこの辺にいるかな〜」
「じゃあ昼休みになったらチャットするから」
「ランチ?ありよりのありだね!美味しいお店開拓したいかも」
自然に解かれる腕、寂しさが残るのは俺のエゴだろう。
「じゃあ私はカフェ行こっかな」と言って、彼女は信号で立ち止まる。
マフラーに埋もれた金髪はふんわりと空気を含んでいた。
双葉は拳を作ると、俺の肩をコツンと小突く。
「それじゃ、今日もがんばってこ」
なんとも元気の出る挨拶で。
「おう、お前もな」
同じく拳を作って彼女の肩を小突く。
気恥ずかしくて、顔に熱が集まるのがわかる。
「いってらっしゃい」
それだけ残して、彼女は青になった信号の向こう側へと消えていった。
◎◎◎
こんにちは、七転です。
昨日も言いましたが、カクヨムコン始まりましたね……!
せっかくのお祭り、書かねばということで。
何事も縛りプレイをした方が楽しいですよね。
もう一作品、このカクヨムの大海原に放流しました。毎日更新はできるところまでします。
もしよろしければご覧ください!
ちなみに1話1500字〜2000字の予定です。
多分私、時間は等しく有限だってことを考えないようにしてますね。
『今年のツンデレ同僚はひと味違う』
ではまた、明日お会いしましょう。
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