やわらかな夜
名古屋ゆりあ
プロローグ
シーツが乱れているベッドのうえで、あたしは裸で四つん這いになっていた。
獣のようなその格好を自分がしていると思ったら、何だかおかしくて笑ってしまいそうになった。
汗でベタベタになってしまっている髪が気持ち悪い。
「――腰、落ちてるよ」
あたしの後ろにいる男が意地悪に囁いて、骨張った彼の両手があたしの腰に添えられる。
「――んっ…」
あたしの敏感なところを彼が見ているのかと思うと、躰が震えた。
「ーーあふれてる…見られて興奮した?」
「――あっ…!」
彼の舌があたしの敏感なところに触れた瞬間、あたしはシーツのうえに突っ伏した。
「――ッ、ああっ…!」
「――紅くなってる…」
無自覚な彼の言葉責めに喜んでいる自分の躰が浅ましくて仕方がない。
いや、言葉だけじゃない。
腰を添えている彼の手にも、触れている舌にも、あたしの躰は喜んで反応している。
「――もうダメだ…」
そう呟くように言った後で彼の舌がそこから離れた。
「――あっ…」
舌の代わりにその場所に触れたのは、彼の灼熱だった。
まだ入れてもいないのに、あたしの躰は灼熱に震えてしまった。
「――もう、いい…?」
彼があたしに聞いてきた。
どうせ入れるんだから、わざわざ聞く必要なんてないじゃない。
彼はこうしてあたしに聞いては、あたしの反応を楽しんでいるのだ。
自分の性格が悪いことに、彼は気づいているのだろうか?
…ううん、気づいていないのかも知れない。
振り返って彼をにらみつけるけれど、簡単に交わされてしまった。
――返事をしなかったら、美味しいお菓子はあげないよ?
彼の目はそう言っているような気がした。
それでも震えているこの躰に逆らうことができなくて、
「――早く、きて…」
震える声で、あたしは彼に言った。
「いいよ」
彼はフッと笑った後、灼熱をあたしの中に入れてきた。
「――あっ、やあっ…!」
入れられた灼熱に、あたしの躰が震える。
「――んっ、はあっ…」
彼は深く息を吐いた。
ズンと、あたしの中で灼熱が突きあげられる。
「――あっ、ああっ…!」
「――はあっ…」
激しく突きあげられるたびに、限界がどんどんと近くなる。
「――ああっ、もうっ…!」
「――ッ、うっ…!」
彼があたしの中で熱を吐いたその瞬間、それにつられるようにあたしも限界に達した。
「――あっ…」
パタリと、あたしはシーツに自分の身を投げ出した。
「――ッ…」
あたしの中から彼の灼熱が出て行った。
彼があたしの顔を覗き込んだかと思ったら、あたしの唇に彼の唇が重なった。
その感触に、あたしはめまいにも似たような感覚を覚えた。
まるで、恋人同士がするような儀式である。
でも、あたしたちの関係は恋人同士じゃない。
だって、あたしは彼を好きになってはいけないのだから…。
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