吸血鬼(偽)は今日も言い間違える -本音は甘えたい、でも恥ずかしい-
焼鳥
第1話 素直ならどれだけ良かったか
「また赤点じゃない。前回も追試受けてたよね、進級出来るのよね?」
「提出物で首繋げてるから大丈夫!」
放課後の教室、二人の生徒がプリントを広げて話していた。
「下から数えた方が早い
「
「勉強してるのよ!」
「いたたたた、耳千切れる!!」
耳を引っ張られてるのが
そして引っ張っている方が
「全く燈火はいつもこれなんだから。よく高校受かったよね本当に。」
「いや~あの時の俺は頑張ったよなマジで。グフッ...」
綺麗なチョップが燈火の頭に入る。
「もう私先帰るからね、燈火は早く先生に出してきてね。」
「はい。」
彼を置いて教室を出る。先ほどはああ言ったが、下駄箱から先に行くことはしない。
(またやっちゃった!!!バカ蓮アホ蓮、一緒に行こうと言うだけじゃない。)
壁で寄りかかるように座り、膝に頭を押し付ける。
昔から私はこうだった。言いたい事と口に出ることが別なのだ。
「好きを自覚してから余計に....」
燈火に恋してるのに気づいたのは高校一年の夏、夏祭りの出来事。
ナンパしてきた男性の大学生に腕を掴まれた時、彼が助けてくれた。その時の彼の表情が私が今まで見た事がない、『男の顔』だった。些細な出来事だったかもしれない。でもそれが気づくきっかけで、それ以前から私は無自覚に彼を好いていた。
変でしかないこの髪と目を「世界で一番綺麗じゃん」なんて言う人だ。お人よしという言葉を人にしたのが燈火だ。まぁ私がチョロいだけと言われればそれまでだが。
「好きだから言葉が悪くなるとか、小学生がすることじゃん。」
先ほどのやり取りを思い出してドンドンテンションが下がっていく。彼は絶対に気にしてないというのに。
「うぅ...バカすぎる。」
「何がバカなんだ?」
「・・・・!!??」
いつの間にか燈火が隣に立っていて、首を傾げていた。
「いつから居たの!?来たのなら声ぐらいかけなさい。」
「お前が座って考え事してたから...声かけなかった俺も悪いけど。」
燈火は下手くそな笑顔を見せながら私の鞄を拾い上げる。
「待っててくれたんだろ。お礼といっちゃなんだが家までもってやるよ。」
「・・・勝手にして。」
帰宅後、蓮はベッドで顔を真っ赤にしながら悶絶した。
「何が『勝手にして』よ、私のバカ!!!!!!!」
本音を言えるのはまだ先のようだ。
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