東国の勇者の場合26

 早速、王宮を出てみることにした。出てみて思うのは王宮の防御壁の周りを出て数百メートル先に海岸線が見える光景だった。その海岸線まで出てみてここが島だったのだと体感する。

そしてすぐ近くに島が存在するのも確認できた。その島はこちらから本当によく見える距離にある。東京にいるとわからないが、瀬戸内海の島々なんかがこのように見えるのだろうか。そう考えるとかつてあそこにできた水軍が一つの国のような働きをしていたのも納得がゆくものだろう。これだけ距離が近いのならば海と言えども川の様に交流することができる。

連携さえ取れれば挟み撃ちや、奇襲作戦なんかもお手の物だろう。海上戦を知らなければこの国全体が一個の要塞として機能するかもしれない。

と、今の段階でここまで想像できてしまうのは流石に物好きが過ぎる。多少自重せねば、どこかで足元をすくわれかねない。気を付けよう。

海岸を見渡していると一艘の船を見つけた。サイズはクルーザーほどだろうか。船体には小屋のようなものが備え付けられていて雨風もしのげるようにできている。さらにはどこぞの部屋で見た細かいディティールの紋様まである。

つまりは、王族ないしその関係者用の船ということか。島同士を移動するときにこういった船に乗って移動するのだろう。効率的だし理にかなってはいるが、こういう生活をしなければならない環境というものは自分にとっては少し地獄のようなものだった。どうやら現代社会の生活がとことん身についているらしい。

「ケンマ様どうぞ、こちらの船にお乗りください。」

リニアさんが船に乗るように促してきた。自分の悪趣味な予想は見事に正解したらしい。なんかうれしくない。魔法というものがあるのだから空を飛んだりできないのだろうか。


不便だ。


「ありがとうございます。」

とりあえず礼だけして乗ることにした。

 中は結構簡素な造りで、船というよりも馬車に近い感じがした。3人か4人ほど座れる椅子が一対向かい合っておかれている。そして壁には椅子の横側だけに窓付けられていた。後は夜間用の明かりがついているだけで、特にこれといった特徴はなかった。

 自分が座った向い側にリニアさんが座ると、船が動き出した。エンジンでもついているのかと思い窓から外を見てみるが特にそれらしき物はなかった。

「こちらの船に関しましては魔法を動力にして進んでおります。」

「あっ、そうなんですね。ありがとうございます。」

どうやら辺りを見回したことでこの船に対して何か不思議に思ったことが伝わったらしい。っというか、魔法使えんのかよ。でも、まぁ、暗い部屋に一瞬で明かりをつけたり、怪我を治したり、かなり便利なところを見せてもらっている。魔法とはやっぱり万能なのだろう。だったら、空を飛んでほしい。

 しばらく進んでいるとほかの船が海上を進んでいるのが見える。クルーズ船のような大きいサイズの物から1人乗りの水上バイクのような小さいサイズの物までたくさんある。多種多様な船が島々の間を縫うように蠢く様は圧巻の一言だった。

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