東国の勇者の場合25

 物足りない食事を終え部屋を出た。今日は少し街を見て周りたい。この世界の文化や街並みこの国に暮らす人間の営みそれらを見てみたかった。

 とりあえず、自室に戻り今後の事について話し合うことにした。

「今日は、この国を見て周りたいのですが、大丈夫ですか?」

「かしこまりました。でしたら、各領地の領主の方々に挨拶もございますので、それと同時に行うということでしたらお時間は確保できるかと思います。」

なるほど、何となく予想していたことではあるが、二週間という自由時間はもともとこのために用意されていた時間を与えられていたのか。やっぱり国王からなる支配者の事は信用はできても信頼はできないというところか。

「ありがとうございます。面会の時間とかって決まっているんですか。」

「そうですねぇ、あまり決まっておりませんので、ケンマ様のご自由で大丈夫です。」

なるほど、こちらからの要望を聞き入れてくれる辺りこの国内での勇者の地位がかなり高いか、勇者に対して何かを要求してくるということだろう。前者はともかく後者なら少し気をつけなければならない。

「それと、差し出がましいようですが御ひとつだけ。」

んっ!?何だろうか。

「面会ではなく謁見とお使いください。領主の方々は皆様高貴な貴族の階級です。大変かもしれませんがケンマ様のお言葉遣いにお怒りになってしまう方もいるかしれません。細かいかもしれませんが、お気を付けください。」

確かに、よくよく考えたら国王への謁見の時と言い結構ひどい言葉遣いであったことには変わりがない。それに身分の高いものの中にはプライドだけが異様に高く、器の小さい者もいないとは限らないだろう。

 いくら勇者とは言え不適切な態度をとったらどうなるかわからないということか。

「わかりました。以後気を付けます。なので、もしふさわしくない態度をとっていたら、さっきみたいに教えてください。」

「かしこまりました。」

そういって頭を下げる。

「では、周る順番などにご要望はありますでしょうか。」

ご要望か、この国の貴族たちの事を誰一人として知らないから要望が思い浮かばない。できうる限り楽に、早く周ることができたら有り難いから、

「じゃあ、リニアさん判断でいいので、先に周っておいた方がめんどくさくない人を最初の方に回して、後は効率よく周れるようにお願いします。」

まあ、こんなところが無難だろう。こうしておけばめんどくさい人間に対して対応もできるし、自分の自由時間も長くとれるというものだろう。

 国王の掌の上で踊りながら自分のやりたいことを貫くとしよう。

「かしこまりました。では、考えてまいりますのでしばらくお待ちください。」

そういってリニアさんは部屋を出て行った。

 しかし5分ほどしてすぐに戻ってきた。

「謁見の順番が決まり支度が整いましたので、さっそく参りましょう。」

この手際の良さ、さては、予想をしていたのだろう。まあ、こんな状況で求めることと言ったら効率だけだし、その中でも領主同士のいざこざの配慮はとっくに済ませいるだろう。一応要望を取り入れたという体裁をとって措きたかったということだろう。

 本当に優秀過ぎるメイドがついてくれている。

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