あくがれ
詩川
あくがれ
皆さんは、空を流れる雲がどこを目指しているかご存じですか?
西から東へと流れていく彼ら、実は目的地があるのです。
それは地上です。寒がりだから壁が恋しいらしい。
しかし、彼らが地上へたどり着くことは決してありません。
なぜなら彼らには責任感という「重み」が無い。
私は、庭のお花に水をやるという重大な任務を彼らに託しているが彼らはサボり、ただ、漂い続けている。
そんな責任感のないふわふわした者がどうして地上に降りられようか、地を掴むような話である。
挙句の果てには私が仕事を終えて帰ろうかというときに、ふと空を見上げると彼らは夕日を受けて真っ赤に染まっている。
きっと昼間から酒を飲んでいたに違いない、うらやまけしからん限りである。
泣きたいときに雨を降らし、怒りたいときに雷を落とす。
寒さに耐えきれなくなれば雪を降らせて寒さを共有してくる。いらないよ!
そのくせ機嫌がいい時にはもくもくと膨れ上がる。
実に自由人だ、そんなだから風に流されるまま漂流を続けているのだ。
その点我々人間を見てみろ、皆仮面を被って生きている。笑顔を貼り付け、媚を売り、ゴマをする。
そして責任感という大変名誉ある「重み」を抱えて生きている。羨ましかろう!
今日も彼らはそよ風に吹かれ気持ちよさそうに空を飛んでいる、何物にも縛られず気ままに飛んでいる。
そんな彼らが心から羨ましい。
人々が上を向いて歩くのは雲への憧れからきているのではないだろうか。
ああ、私は雲になりたい。
あくがれ 詩川 @nin1732
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