クィーンズ・ナイト ~美しき格闘女王たち~

新理ツク

クィーンズ・ナイトへようこそ

クィーンズ・ナイトへようこそ

 北海道札幌市、そこにあるススキノと言う場所は北海道一の歓楽街として知られていた。人々はススキノという場所に遊び、酒、料理……様々なものを求めてススキノを訪れる。

 しかしそれはあくまで表の部分、言ってしまえば地上に見えている部分に過ぎない。ススキノの地下には様々なアングラな非合法店舗がひっそりと、そして確かに存在していた……。



「ようこそクィーンズ・ナイトへ!!俺の名はDJドグマ!!今日も女王闘技を実況していくからよろしくな!!」


 DJドグマと名乗った男のアナウンスがススキノの地下に存在する地下闘技場【クィーンズ・ナイト】の会場に鳴り響く。地下闘技場、それは裏の世界におけるポピュラーな娯楽の一つと言えるだろう。表には出てこない強力な力を持った闘士たちが命を賭して戦いを繰り広げる。それを表の世界では味わえない刺激的なものであった。


「うおおおおおおおおお!!」

「早く闘技を見せてくれよ!!」

「俺はもう待ちきれないんだ!!早く始めろ!!」


 会場内の観客たちは格闘女王の登場を今か今かと待ちわびている。DJドグマは観客たちの期待を煽るような煽り方をし、観客たちを盛り上げる。


「ハッハッハ!!女王たちは逃げも隠れもしない!!お前たちはここでただ待っていれば、彼女たちが戦う姿が見れるんだ!!」


「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」


 観客たちの期待が最高潮に高まった時、スモークの演出と共に二人の女性が登場する。1人はショートカットの茶髪が特徴的なセーラー服を着た美少女。もう1人は銀髪のボブカットの上に猫耳がついた帽子を被り、タンクトップとショートパンツの上にパーカーを羽織った少女。


「今回戦うブロンズクラスの格闘女王の紹介をしよう!!まずは女子高生空手ファイター、鈴木キョーコから紹介しよう!!彼女は行方不明になった姉を探すためこのクィーンズ・ナイトに参戦した空手の使い手の女子高生!!うんうん!!なんとも泣ける話じゃないか!!その勇気に観客のみんなからの拍手を!!」


 DJドグマが紹介をすると、会場から拍手が沸き上がる。


「さて、もう1人は大学生でありながらハッカーとして顔……そして我流の技で戦う格闘女王としての顔を持つ猫田タマキだぁ!!彼女のハッカーとしての技術、そして我流の技は俺たちを大いに盛り上げることだろう!!」


 DJドグマはタマキの紹介をすると、会場からはタマキへの大きな拍手が沸き上がる。


「よーし!!それぞれお前たちも闘技を見る準備はできたか!?それじゃあ闘技開始だぁ!!」


 DJドグマの宣言と共に、タマキとキョーコがそれぞれ構えを取る。


「キョーコには悪いッスけど、今日は勝たせて貰うッスよ!!」

「タマキさん、私には目的があるの……

悪いけど私だって負けられないの!!」

「それじゃあ試合開始だぁ!!」


 ゴングの音と共に試合開始の宣言が出される。先に動いたのはキョーコ、タマキに向かって走り出し、そのまま勢いをつけた蹴りを繰り出す。


「なるほど早いッスね……でも見え見えッスよ!!」

「なっ!!きゃあ!!」


 タマキは繰り出された蹴りを軽々とかわし、キョーコの足を掴む。そしてそのままキョーコを地面に叩きつけた。


「うおぉ!!これはタマキが有利を取ったか!!キョーコが地面に叩きつけられたぁ!!」

「くっ!!まだまだぁ!!」


 キョーコはすぐさま起き上がり、タマキに向かって再度蹴りを繰り出す。しかしタマキはそんなキョーコの蹴りを軽々と受け止めた。


「遅いッスよ!!」

「くっ!!この!!」


 タマキはキョーコの足を掴んだまま、飛び上がりキョーコを振り回す。


「遠心力でヘロヘロになるッスよ!!」

「きゃあ!!」


 タマキはさらに振り回す力を強くする。


「これはすごい回転力だぁ!!このままだとキョーコが目を回してダウンしてしまうぞぉ!!どうする!?」


 DJドグマの実況と共に、キョーコは目を回していく。


「くっ!!目が……目が回るぅ!!離してぇ!!」

「離してと言われて離す人はいないッスねぇ!!このままダウンを狙わせて

貰うッスよ!!それぇ!!」

「きゃあああ!!!」


 タマキは回転の勢いをさらに強くする。このままだとキョーコは遠心力で気絶してしまうだろう。


(くっ!!このままだと何もできずに負けてしまう……なんとか……なんとかしなきゃ!!)

「これで終わりッス!!」

「おおーっと!!ここでタマキがさらに回転の力を強くしたぁ!!このままだとキョーコがダウンしてしまうぞぉ!!」


 DJドグマの実況が会場に響く中、タマキはさらに回転の勢いを強めていく。しかしここでキョーコは一計を案ずる。彼女はタマキが振り回すのとは反対方向に自らの身体を回転させた。


「なっ!!そんな!!キョーコにこんな力がまだ残っていたなんて……」

「今よ!!」


 キョーコは遠心力を逆に利用し、タマキを地面に叩きつける。タマキは咄嗟に受け身を取ろうとするも間に合わず、地面に叩きつけられた。


「ガハッ!!」

「おおっーと!!キョーコがタマキを地面に叩きつけたぁ!!」

「まだまだよ!!やぁっ!!」


 キョーコは地面に叩きつけられたタマキを追撃する。彼女はタマキの身体の上にマウントを取り、そのまま拳でタマキを殴り続ける。


「このっ!!このぉ!!」

「うぐっ!!がはっ!!ぐふっ!!」

「うわぁ!!形勢逆転だぁ!!キョーコのマウント攻撃でタマキがダウン寸前!!これはこのまま負けてしまうかぁ!?」

「くっ!!チョーシに乗るな……ッスよ!!」


 タマキはキョーコのマウントから脱出し、飛び上がる。そして空中で一回転し、その勢いでキョーコの側頭部を蹴り飛ばした。


「あがっ!!」

「ふん!!私のかわいい顔に傷をつけた報いッス!!」


 キョーコとタマキは再び向かう会う形となる。


「さてと……長期戦っていうのはそんなに好きじゃないッスし、そろそろ決着をつけるッスよ!!」


 タマキは空中に飛翔し、キョーコ目掛けて錐揉み回転をしながら飛び蹴りを放つ。


「でたぁ!!これはタマキの必殺技の一つ、【ローリングIGS】!!これは勝負が決まったかぁ!?」

「これならどうッスかぁ!!この威力なら避けることも受け切ることも出来ないッスよねぇ!!」

「くっ!!このままでは……ならこっちも必殺技で勝負よ!!」


 キョーコがそう宣言すると、タマキ目掛けて跳躍し、飛び蹴りを繰り出した。

「流星空脚……お姉ちゃんが私に教えてくれた技よ!!」

「なっ……あぐっ!!」


 キョーコの飛び蹴りがタマキの飛び蹴りと衝突し、その衝撃でタマキは吹き飛ばされてしまう。


「な、なんて威力……ガハッ!!」


 タマキは口から血をだしそのまま気絶してしまった。


「決まったぁ!!キョーコの流星空脚がタマキを倒したぁ!!勝者は鈴木

キョーコだぁ!!」


 DJドグマがそう宣言すると、スモークと共にキョーコにスポットライトが当たる。


「はぁはぁ……勝った……」


 キョーコは勝利の余韻に浸っていた。彼女はこの地下闘技に勝利し、行方不明になった姉を探すための情報を手に入れる。そのためにはこのクィーンズ・ナイトを勝ち進むしか無いのだ。


「さて!!次の闘技をするための準備のため少しの間リングの清掃時間を儲けるぜ!!その間は休憩タイムだぁ!!それでは存分に休んでくれ!!」


 DJドグマの宣言と共に、闘技を観戦する観客たちや、闘技を行う闘士たちが休憩時間に入る。これがクィーンズ・ナイトの闘いの一つであった。

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