第3話

「わー、けっこーさむいねー、」


学校終わり、わたしはさかぐちクンと、人生2回目のうみにきていた。


「夏に来た時は、暑すぎてずっと日陰を探して歩いてたのにね」


さかぐちクンはクスッとわらった。


あいかわらず、波はいったりきたりを、くりかえしてた。


「どっか座ろうか」


わたしたちは、うみがみえる土手に腰をかけた。


ふゆの匂いに、


弱々しくひびく、波のおと。


さかぐちクンは、手に持っていたココアをひとつくれた。


「どうだった?」


さかぐちクンは、やさしく、わらった。


わたしは、チョコレートケーキを思い出した。


「…ほんとうは、どっちでもよくなんか、なかった。」


缶のココアをひとくち、のんだ。


「さかぐちクンのおかげで、変われたよ。」


さかぐちクンは、そっかとだけ言って、わたしの手を握った。


わたしの少ないことばのなかに、さかぐちクンは、なにを感じているのかな、


ちゃんと、つたわっているのかな、


つたえたいことを、


わたしは、ちゃんと、言えるかな。


わたしは、かばんの中から、ちいさな花束をだした。


ガーベラの花言葉は、


希望。


「さかぐちクン、わたしを見つけてくれて、ありがとう!」


欠けたこころの埋め方を


だれも、教えてなんかくれなかった。


ただそばにいれくれる、


たったそれだけで、


愛をもらえること、


あなたが教えてくれた。


「ずっと、隣にいてください。」


さかぐちクンは、花束をうけとったあとに、こちらこそって言って微笑んだ。


儚い花に、きもちをのせて、


わたしの言葉でしっかりと、


さかぐちクンがわたしに、あたえてくれたものを、


つぎは、わたしが、返していきたい。

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